雑記614. 2026. 9.16
“ リングと瓦 ”
典型的なマテバシイの殻斗は、瓦状の鱗片で構成されています(図8-614-1参照)。
ただ、これまでに多くの個体を観察していると、しばしば瓦状の鱗片の中にリング状(もしくは渦状)のものが混在した殻斗に出会うことがありました(図8-614-2〜図8-614-3参照)。それらは、いずれも果軸に近い鱗片の1〜2層がリング状で、それ以外の部分は瓦状でした。ちなみに、同じマテバシイ属のシリブカガシでも似たような構造が認められます(*)。
* 熱帯地方に分布するマテバシイ属の仲間には、Lithocarpus longipedicellatus、Lithocarpus ithyphyllus、Lithocarpus pseudoreinwardtii 等、瓦状ではなくリング状の鱗片の殻斗をもつドングリを結実するものが多数存在します。
Fey & Endressが考案した殻斗の概念図を見ると、鱗片が瓦状であるか、もしくはリング状であるかは、殻斗の成長過程におけるちょっとしたボタンのかけ違いのようなことが影響しているように思われます。ですから、マテバシイやシリブカガシでも瓦状ではなく、リング状の鱗片だけで構成された殻斗をもつドングリを結実する個体があっても、なんら不思議ではありません。
数年前に、リング状と瓦状の鱗片が混在する様子を目にしてから、私はマテバシイを見かけるたびにそれらの殻斗の構造を入念にチェックしてきました。そしてこの夏、ほぼリング状の鱗片から成る殻斗をもつドングリが生る個体を見つけたのです。結実にはまだ時間を要しますので、詳細については後日あらためてご報告します。