雑記611. 2026. 8. 1
“ カシワの花のディティール ”
6月に入って、港湾緑地南公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のカシワに季節外れの花が咲きました(*)。コナラやナラガシワではしばしば目にするのですが、カシワで目撃したのはこれが初めてです(図8-611-1、図8-611-2参照)。
* 雑記610を参照願います。
コナラ属の他の樹種に見られる季節外れの花序と同様、最終的にカシワの花序も結実することなく、開花して一ヶ月程度が経過した7月中頃から枯死するものが現れ始め(図8-611-3参照)、その月のうちにすべての花序が消滅しました。
ところで、今回目撃したカシワの花序を見て気づいたことが二つありました。一つは、季節外れに咲いたコナラ亜属の花序は、カシワも含めて多果形態の花序の発現が極めて少ないということでした。私がこれまで目撃したコナラ亜属の季節外れの花序は、コナラ、ナラガシワ、ウバメガシとカシワの4種ですが、いずれも多果形態の花序は稀でした。ちなみに、今回目撃したカシワについては皆無でした。図8-611-4にある黄色の矢印で示したものは一見すると2果のようですが、これは2つの単果が合着したもので、多果ではありません。
同じコナラ属でもアカガシ亜属の樹種については、これまでにウラジロガシでしか季節外れの開花を目撃していませんが、花序の大半が多果形態でした(**)。通常、ドングリに見られる多果の割合は、アカガシ亜属の樹種の方がコナラ亜属のものを圧倒していますが、もしかすると後者は、その種が誕生した当初から、多果形態の花序の割合が極めて低かったのかもしれません。
** セクション22の7項を参照願います。
もう一つ気づいたのは、コナラやナラガシワ、ウバメガシの季節外れの花序は、新枝の冬芽(頂芽、側芽)が開いて花軸専用の新枝が出現し、そこに複数の穂状花序が立つのが普通でした。ところが、このカシワに咲いた花序はすべて花軸専用の新枝を介さずに、複数の穂状花序が冬芽から直接立ち上がっていました。
同じコナラ属でもアカガシ亜属については、ウラジロガシで目撃したほとんどの花序が、花軸専用の新枝を介さずに、複数の穂状花序が冬芽から直接立ち上がっていました。セクション30-1でコナラ属における花序の進化の過程について私見を述べましたが、アカガシ亜属に見られるこの形態の方が花序の進化の上流に位置すると考えられるので、今回目撃したカシワの花序は、コナラ亜属のものの中でもかなり初期の形態を現出したのではないかと思われます。