雑記607. 2026. 6. 6
“ ツブラジイの特異な雌花序 ”
 スダジイやツブラジイは、花期になると樹冠が薄黄色の綿毛のような雄花に覆われ、周囲の樹木の中で圧倒的な存在感を放つようになります。どちらも4月〜5月に花を咲かせますが、京阪神ではスダジイの開花が4月下旬頃なのに対し、ツブラジイはやや早く、4月半ばには既に開花している個体が多く見られます。

 さて、スダジイやツブラジイの雌花序は、後者の方が前者に比べてやや小さめである点を除くと、個体差はほとんど認められません。ところが、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のツブラジイの中には、特異な形態の雌花序が咲く個体があるのです。

 
 典型的なツブラジイの雌花序(図8-607-2参照)は、小さな土饅頭のような殻斗の元になる器官に雌花が咲きますが、その個体ではお椀か円盤のような巨大な殻斗の元になる器官に雌花が咲きます。しかも、この形態の雌花序がこの個体の多くの新枝に認められます(図8-607-3参照)。


 一般に、シイ属もコナラ属と同様に多果を発現します。ただ、一つの殻斗の元になる器官に、2つ乃至3つの雌花が咲いたものならよく見かけますが、4つ以上のものを目にすることはまずないでしょう。そんな中で、数年前に私が4つ以上の雌花を咲かせた多果の発現を確認したのがこの個体です
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 おそらく、この個体は雌花の受け皿となる殻斗の元になる器官を巨大化する能力を具備していたからこそ、シイ属では極めて珍しい、1つの殻斗の元になる器官に4つ以上の雌花が咲く多果を発現できたのではないでしょうか。この春、この個体で久しぶりに咲いた特異な雌花序を見ながら、私はそう感じずにはいられませんでした。
* セクション3-1-2 6項(ツブラジイ)を参照願います。