雑記586. 2025. 9.25
“ 吐き出された種子 ”
京阪神では、9月上旬〜11月上旬頃がマテバシイのドングリの結実期になります。今月初めに山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] を訪れた時には、すでにドングリが色づき始めた個体がいくつか見受けられましたが、それらの樹上に奇妙なドングリを見つけました。なんとそのドングリは、堅果が種子を吐き出したかのように、首回りの果皮が割裂して、そこから種子が飛び出していたのです(図8-586-2参照)。
この時期、首回りの果皮が割裂したマテバシイのドングリは珍しくありません(図8-586-3参照)が、堅い果皮をこじ開けるようにして内部の種子が飛び出した姿を私が目にしたのは、これが初めてかもしれません。
コナラ属のドングリでは、多種子が同時に発現した場合、しばしば首回りの果皮が割裂して、中から種子がはみ出した姿を見かけますが、このマテバシイのドングリは、種子は肥大化したせいで、自らの圧力で果皮を割裂して外に飛び出したわけではなさそうです。その証拠に、採集してから半月ほど経って、やや乾燥した堅果を解体したところ、内部の種子はとても果皮を割裂できるほどのサイズではなく、むしろ成長不良とも思える小さなものだったからです(図8-586-4参照)。
ただ、同時期に果皮が割裂しただけの他のマテバシイのドングリを見ても、これと同じように種子は成長不良のものばかりなので、種子の成長が思わしくないと、マテバシイは結実する前に果皮を割裂するのかもしれません。それにしても、堅い果皮の中から小さな種子を外部に押しやるほどの力は、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。