雑記584. 2025. 9.11
“ 首回りに残された小さな堅果 ”
 コナラ属では、多果として発現しても成長過程でその一部が消滅したり、枯死してしまうことが多いので、シラカシ等の特定の樹種を除くと、明確に多果の形態を維持したものが結実することは稀です。

 多果の成長過程でその一部が消滅した代表的な事例として、残された堅果の表面にへそから首に向かって伸びる、およそ堅果とは言えないような細長い線状の痕跡があります(図8-584-1参照)。それらは、へそから首に至る途中で断裂しているものが多く、首に相当する先端付近に花柱が見られることはまずありません。

 
 ところが、今年の夏、塩瀬中央公園 [ 所在地 : 兵庫県西宮市 ] のコナラで、断裂した細長い線状の物体の先端に、明確な花柱が残存したコナラの幼果を見つけたのです(図8-584-2、図8-584-3参照)。


 コナラ属の中でもコナラは、とりわけ多果と判別できるドングリを結実しにくい樹種
(*)ですが、このドングリの首回りに貼り付いた線状の物体には花柱があることから、これは明確な多果(2果)と言えるでしょう。線状の物体には、ドングリなら普通に見られるへそに相当する部分はありませんが、これでも立派な堅果なのです☆
* セクション3-1-2 コナラの項を参照願います。