雑記583. 2025. 9. 2
“ アベマキでは初めてのタイプです☆ ”
摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] のアベマキの中には、毎年のように多果を結実する個体(*)があります。今年、その個体で同種としては珍しい形態の多果を見つけました。
これまで、この個体で採集した多果の形態は、複数の堅果を1つの殻斗がまとめて包含するタイプ [ 堅果統合型殻斗 ] (図8-583-1参照)と、複数の堅果を1つの殻斗が分けて包含するタイプ [ 堅果分離型殻斗 ] (図8-583-2参照)で、前者が全体の8割を占めていました。
一方、後者については、いずれも殻斗の内側にある離層の痕跡から延伸した仕切り(**)のようなものが堅果を分離していましたが、仕切りには鱗片の存在は認められませんでした。ところが、今回見つけた多果は、仕切りではなく鱗片のある殻斗そのものが、2つの堅果を分離していたのです(図8-583-3参照)。
この多果は完熟前に脱落したみたいで、堅果は鱗片に覆いつくされていました。そのため、この写真では殻斗が2つの堅果を分離している様子が判りづらいのですが、いろんな角度から2つの堅果の境界付近を観察してみると、単なる仕切りではなく、鱗片のある殻斗によって2つの堅果が分けられていることが確認できました。
** 仕切りの存在が明確な事例は、雑記269、雑記474を参照願います。
ちなみに、鱗片のある殻斗そのものによって分離された多果は、リング状の鱗片をもつアカガシ亜属(シラカシ、アラカシ等)ではごく普通に見られますが、アベマキのような細長い鱗片に覆われた殻斗をもつものでは、これまでカシワが唯一(***)でした。
*** 雑記499を参照願います。