雑記574. 2025. 4.25
“ 黒いキャップを被った幼果 ”
4月になって、公園や雑木林のドングリの木に花が咲き始めました。クヌギはアベマキやアラカシと並んで、京阪神では比較的開花が早い樹種ですが、この時期のクヌギの樹を見ると、枝のあちらこちらにポツポツと小さな黒い塊のようなものを目にすることがあります。近づいてよく見ると、それらは前年の春に咲いた幼果が、黒い物体に覆われたものであることが判ります(図8-574-2参照)。たぶん、クヌギの樹に関心をもたれている方なら、一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
この黒い物体は、特定のクヌギでしか見ることはできませんが、該当する個体では、少なくとも全体の半数以上の幼果に見られます。開花した年の秋から冬にかけて、徐々に幼果の先端が黒い物体に覆われ、図8-574-2のような状態になると、それ以上肥大することはありません。また、この物体に覆われると、幼果は以降の成長が停止し、同時期に咲いたものが結実する頃になると、黒い物体だけが幼果から脱落します(図8-574-3参照)。
この中から昆虫が出てくる気配はないので、昆虫が寄生して形成された虫瘤ではなさそうですが、乾燥した茸みたいな触感なので、菌類のようなものが寄生しているのかもしれません。
ところで、つい最近までこの黒い物体はクヌギだけに見られるものだと思っていたのですが、先日西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のアベマキでも、これと同じものを見つけました(図8-574-4参照)。クヌギと同様に、アベマキでも全体の個体の半数以上の幼果に黒い物体が認められました。
この物体は、タマバチが寄生して形成された虫瘤(*)のようにドングリの形態を左右するものではないので、私はこれ以上踏み込んで調査しませんが、ここで紹介した断片的なデータが、ドングリの樹の寄生に興味のある方の参考になれば幸いです。
* セクション9-1を参照願います。