雑記573. 2025. 4.12
“ 亀裂の入りやすさは個体差? ”
 オキナワウラジロガシのドングリは大きくて立派なものが多いのですが、採集したものをサンプルとして保存するために乾燥させると、しばしば果皮に大きな亀裂が入ります。亀裂はドングリの大小を問わず生じますが、縦長の堅果にはあまり入らず、大きくて丸い形をしたものに入りやすい傾向があります。へその辺りに微かに入る程度なら、保存サンプルとしては許容範囲ですが、堅果の中程までザックリと割裂して、外観を大きく損なうようなものはいただけません。

 以下に紹介するのは、2024年12月の第4回 久米島ドングリ探検ツアーで採集した堅果に対して保存処理を施し、およそ4ヶ月をかけて十分に乾燥させたものです。
 まずは、縦長の大きな堅果の例を示します(図8-573-1参照)。左端から2つ目の堅果のへその周りには軽微な亀裂が入りしましたが、他の堅果には亀裂が認められませんでした。縦長の堅果でも、ものによってはへその周りに大きな亀裂が生じましたが、それらはごく僅かでした。


 次に、山城地区の特定の個体から採集した大きくて丸い堅果
(*)の例を示します。全部で60個余り採集しましたが、全て亀裂が生じました。ただ、この図のように堅果の中程まで亀裂が入ったものは全体の3割程度で、それ以外のものは比較的軽微でした。
* 雑記564を参照願います。


 もう一つ、島尻地区の特定の個体から採集した大きくて丸い堅果
(**)の例を示します。こちらも30個余り採集したものの全てに亀裂が生じました。しかも、類似した形態の堅果の中では、この個体の亀裂が最も顕著でした。
** 雑記566を参照願います。

 
 図このように、大きくて丸い堅果には亀裂が入りやすいのですが、採集した個体によっては全く亀裂が入らないものもありました(図8-573-4参照)。たぶん、亀裂の入りやすさはドングリの形態も然ることながら、そのドングリを結実した個体に大きく依存しているのかもしれません。

 
 以前のツアー(第1回〜第3回)で採集した堅果は、本土で採集した他の種類のものと同様に、沸騰したお湯に20分程度ドングリを浸漬した後、日の当たらない風通しの良いところで数日乾かしてから、室内で4ヶ月〜半年程度放置していました
(***)。その結果、比較的大きなドングリの半数近くに大きな亀裂が生じていました。
 しかし、今回のツアーで採集したものについては、室内における急激な乾燥を避けるために、庭に設置した風通しのよい納屋(開放型)に放置していたところ、全体的に亀裂がかなり緩和されたように思われます。
*** 雑記289を参照願います。
 そして、その方法が功を奏したのか、島尻地区で採集した超巨弾(****)については、多少の亀裂はあるものの、外観を大きく損なうこともなく、保存サンプルとしては良好なものに仕上げることができました(図8-573-5参照)。
 たまたま亀裂が入りにくい個体のドングリだったのかもしれませんし、今回のツアーでは主に結実して落下したばかりの新鮮なドングリを採集してきたので、それも亀裂を最小限に抑制できたことに少なからず関与したかもしれません。
**** 雑記568を参照願います。

 
 どうにかしてオキナワウラジロガシの堅果の亀裂を抑制しようと、ドングリを採集してくるたびに試行錯誤を繰り返していますが、現段階では十分に満足のいく成果は得られておりません。これからも、より美しい状態でドングリを保存できるよう、最適な処理方法を模索していくつもりです。