雑記571. 2025. 1.20
“ オキナワウラジロガシの真相 ”
第4回 久米島ドングリ探検ツアーでは、南部山岳地帯 [ 山城、島尻地区 ] が空前の大豊作だったこともあり、かなりの数のドングリを採集することができました。とりわけ、堅果については割れや傷がないものを現地で選別し、1200個余りを持ち帰りました。これほどの量を採集できる機会は滅多にないので、これらを使ってオキナワウラジロガシの堅果の重量分布を調べてみました。
検体については、ゾウムシ類による産卵孔があるものや水に浮くものは除外し、小数点1桁まで計測できる計量器を使用して個別に重量を測定しました。ちなみに、これらの堅果の中で極端に大きなものについては意図的に、それ以外のものについてはほぼ無作為に採集しました。
表8-571-1は、総検体数:1198個のオキナワウラジロガシの堅果の重量を測定した結果をまとめたものです。この表で注目すべき点は、堅果の重量が14g以上になると数量が急減していることです。この14gというのは、本土で最大と言われるクヌギのドングリの中でも、見た目がかなり大きいと思われるものの目安となる数値(*)なので、もしかするとオキナワウラジロガシとクヌギの重量分布には何か関係があるのかもしれません。
* 私の経験から感覚的に導き出したものです。
そこで、2023年から現在に至るまでの間、京阪神の各地で採集したクヌギの堅果の重量を個別に測定したデータをまとめてみました(表8-571-2参照)。二年間に亘ってクヌギの堅果の重量を測定してきたのは、前回の久米島ドングリ探検ツアーの後に、できれば次回(今回)のツアーでオキナワウラジロガシの堅果の重量分布を調べてみたいと考え、その比較対象になるものとして、本土で最大のクヌギの堅果を取り上げることを予め想定していたからです。なお、クヌギについても極端に大きなものは意図的に、それ以外のものについてはほぼ無作為に採集しましたが、16g以上のものについては数が少ないため、2005年から採集してきたもののデータも加味しました。
その結果、クヌギについても堅果の重量が14g以上になると、オキナワウラジロガシと同様に数量が急減する傾向が認められました。それ以外にも、7〜13gの間に分布が集中していることや、6g以下で数量が急減していること等、分布の形態そのものがオキナワウラジロガシとクヌギでほとんど変わらない、というかほぼ同じであることが判りました。
唯一違う点は、私がこれまでに採集したクヌギの堅果の最大重量が22g強であるのに対して、オキナワウラジロガシではそれをはるかに上回るものが存在することです。ただ、オキナワウラジロガシと言えども、クヌギを完全に凌駕するような超重量級のドングリを結実する個体は、おそらく種全体のコンマ1%に満たないぐらい稀少ではないかと思われます。
ということで、実際に測定するまでは、オキナワウラジロガシの堅果の平均的な重量は日本一だと思っていたのですが、予想に反してクヌギとほぼ同じ(同率一位)という結果になってしまいました。
堅果の重量に関して、オキナワウラジロガシは国産のドングリの中で圧勝というわけにはいきませんでしたが、同じ重量のオキナワウラジロガシとクヌギの堅果を比べてみると、やはり前者の方が大きいのです。同じ重量なのに大きさが違うというのは奇異な感じがするかもしれませんが、これは両者の果皮の厚みの違いによるものと考えられます。
堅果の重量は、果皮に包まれた種子の重量にほぼ等しいので、同じ重量でも果皮が厚い方が堅果はより大きく見えます。ちなみに、クヌギの果皮の厚みが0.5mm弱程度であるのに対して、オキナワウラジロガシは1.5〜2mm(図8-571-3参照)もあるので、同じ重量の堅果を比べた場合、後者の方の堅果幅が最大で3mmも大きくなります。ドングリのサイズは高々数10mm程度なので、堅果幅が1mm違うだけで、見た目にはっきりとサイズの違いが現れます。ですから、堅果幅が3mmも違ったら、両者のサイズの差は歴然でしょう。そんなわけで、堅果の重量の分布はオキナワウラジロガシとクヌギで同等ですが、サイズの分布は前者が後者よりも全体的に数g程度高い方向にシフトするので、平均的な値は前者の方がかなり大きくなります。
以上の結果をまとめると、堅果の重量についてはクヌギと同程度でしたが、サイズについてはオキナワウラジロガシがクヌギを圧倒して日本一であることは間違いないでしょう。