雑記057. 2011. 9.25
“ アベマキのドングリの豊庫 〜 服部緑地公園 〜 ”
 清々しい秋晴れの好天に恵まれた3連休の中日に、服部緑地公園に行ってきました。ここは、ドングリの質と量において、大泉緑地公園に勝るとも劣らない、京阪神地区を代表するドングリの採集スポットです。今月中旬に訪問した大泉緑地公園(*)では、コナラのドングリの結実状況が芳しくなかったのですが、それとは対照的に、服部緑地公園のコナラは良好でした。既に地面を覆い尽す程、たくさんのドングリを落としているものもあり、今年初めて落下したばかりのコナラのドングリを手にした私は、すっかり上機嫌になってしまいました。
* 雑記54を参照願います。

 服部緑地公園と言えば、たくさんのアベマキが植栽されており、それらの樹が結実するドングリの多様性については、京阪神でも他に例を見ません。ちょうど今の時期は、毎年大量のアベマキのドングリが落下するのですが、今年も期待に違わず、園内の随所で色艶のいい様々な形のドングリが採集出来ました(図8-57-2参照)。
 とりわけ、同園で最も太っちょのドングリを結実する樹が、今年は大豊作で、樹下には15〜16gもある堅果が大量に散乱していました(図8-57-4参照)。

 アベマキのドングリはクヌギのものと非常に良く似た形をしており、堅果の外観からだけでは、何れのドングリか識別出来ないものがたくさんありますが、同種内での形態の違いについて見ると、アベマキの方がクヌギとは比較にならないぐらい多様です。
 私がドングリに興味をもつようになったのも、この事実を目の当たりにしたのが発端ですから、未だに他のどの種類のものよりも、アベマキのドングリには深い愛着を感じています。

 ところで、アベマキのドングリについて、以前から不思議に思っている事があります。それは、私の大好きな変形ドングリ “ 変形くん ” (**)を発生する頻度が、クヌギよりもアベマキの方が圧倒的に高いという事です。残念ながら、この事実をデータとして示すことは出来ませんが、普段アベマキよりもクヌギのドングリを目にする機会の方が多いのに、“ 変形くん ” と遭遇するのは、ほとんどの場合がアベマキなんです。これは、一体何を意味しているのでしょうか。

 セクション3-1でも説明した通り、“ 変形くん ” は、多果ドングリの発現と密接に関係しています。現世では、コナラ属における多果ドングリの発現は珍しいのですが、太古(=中世代)にブナ科の祖先からコナラ亜科が分化した頃には、むしろ多果の形態が一般的であり、時間の経過と共に堅果数が退化減数して、現在我々が目にするような、1つの殻斗の中に堅果が1つだけ入った形になったと考えられています。
 “ 変形くん ” をドングリの樹の進化の指標と考えるならば、“ 変形くん ” を発現しやすいアベマキよりも、発現しにくいクヌギの方がより進化した...というか、洗練された存在ということになると思うのですが...。DNA解析で、そういう微妙な違いとか解るもんなんでしょうか?
** 変形ドングリ “ 変形くん ” については、セクション3-2-1を参照願います。