雑記567. 2025. 1.11
“ 澤に面した山の斜面を登っていくと... ”
ツアー3日目の最終日は、単独で島尻地区に出掛けました。これまでは、Kさんに案内していただいた場所を中心に採集してきましたが、今回は思い切って未踏のエリアに潜入し、まだ見ぬオキナワウラジロガシの風景やドングリとの出会いを求めて探索しました。
前3回のツアーで、北部山岳地帯のだるま山を探索したところ、オキナワウラジロガシのドングリは、主に澤沿い(雨天に形成されるものも含む)にある個体で結実しやすく、それ以外の場所に立地する個体は、積極的にドングリを結実しないように感じられました。とりわけ、澤に対して垂直方向に拡がる比較的平坦な土壌では、多少の雨が降ってもドングリの輸送媒体となる水流が発生しません。もしかすると、そういうところに立地している個体は、ドングリを結実しても水流による散布が期待できないことを経験的に体感しているから、滅多にドングリを結実しないのかもしれません。
だるま山とは異なり、島尻地区では澤が流れる山道沿いの両岸が傾斜面になっており、降雨の際には斜面の上方から澤に向かって水流が発生します。島尻における今年のドングリの落下状況をみると、これらの傾斜面に分布する個体からもドングリが落下している可能性があるので、時間の許す限り、澤沿いの山道の数箇所から巨岩に埋め尽くされた斜面を上の方まで登ってみることにしました。
未踏の山中は、これまでのツアーでは体験したことがない、私好みのうっとりするような南国のジャングルでした(図8-567-1参照)。とりわけ、大きなオキナワウラジロガシがあちらこちらで巨岩を包み込むように板根を下ろす姿は圧巻でした(図8-567-2参照)。
そして、無数のオキナワウラジロガシが立つ岩場の間は、どこも足の踏み場がないぐらい大量のドングリによって埋め尽くされていました(図8-567-3参照)。しかもこの状況は、山道から斜面を登り始めた辺りから、上方に50メートルぐらい登ったところまで途切れることなく続いていたのです。
剥き出しの岩ばかりの地面にもかかわらず、落下したドングリには微毛がほとんど剥落していない美品が数多く見受けられました(図8-567-5参照)。勿論、樹上から直接岩に衝突して、割れたり傷ついたりしたドングリも多かったのですが、落下したドングリの数が半端なかったこともあり、運良く衝突を回避できたものも相応の数に上ったのではないかと思われます。
ところで、この日2番目の斜面を登っている途中で、縦長の巨弾に出会うことができました(図8-567-6参照)。寸胴な巨弾が多い中で、重量が20g強もある縦長の巨弾をゲットできたことは喜ばしい限りでした。
結局、早朝から4時間ぐらいほとんど休みなく探索して、山道にある3箇所の入口から傾斜面を踏査しましたが、どの傾斜面にも例外なく大量のドングリが落ちていました。やはり、同じ澤に対して垂直方向に拡がる土地でも、降雨時に水流が発生しやすい斜面に立地する個体は、平坦な場所にある個体に比べてドングリを結実しやすいのではないでしょうか。