雑記559. 2024.11.29
“ 躍動する3つの堅果 ”
今年の3月、実家に行った帰りに長居植物園 [ 所在地 : 大阪府大阪市 ] に立ち寄りました。同園を訪れたのは10数年ぶりの事で、以前に比べて園内はすっかり様変わりしていましたが、照葉樹林のエリアに多数植栽されたシリブカガシは今も健在で、その内の数体には金岡公園 [ 所在地 : 大阪府堺市 ] の個体と同様、結実期をとっくに過ぎていたのに、樹上には結実したばかりのような新鮮なドングリがたくさん実っていました(*)。昨年の秋に開花したばかりの花序も多数見受けられたので、今年の秋には久しぶりに同園でシリブカガシのドングリを採集しようと楽しみにしていたのですが、先日ようやくその機会をもつことができました。
* 雑記381を参照願います。
さて、当日園内のシリブカガシの樹上にはたくさんのドングリが結実していました。天気も良好で、樹上のドングリを撮影するには最適な陽気でした(図8-559-2参照)。地面には美しくて艶のある多様な形態のドングリが大量に落下していましたが、シリブカガシによくある一風変わった形のドングリも数多く見られました。
私の経験から言うと、同じマテバシイ属のマテバシイよりも、シリブカガシは1つの殻斗の開口部が複数個の堅果を包含した形態のドングリを結実しやすいように思われます(**)。昔、頻繁に同園を訪れていた時には、そういう形態のドングリばかりを大量に結実する個体が何体かありましたが、今もその状況に変わりはありませんでした。
図8-599-3は今回採集したものですが、これらは1つの殻斗の開口部が3つの堅果を分離して包含したドングリです。マテバシイでは大変珍しい形態ですが、シリブカガシではそれほどでもありません。これら以外にも同じ形態のものを7個も見つけました。ちなみに、1つの殻斗の開口部が2つの堅果を分離して包含したドングリについては、数えきれないぐらいありました。
** 雑記374を参照願います。
他にも、図8-559-4のような2つ、乃至3つの堅果が合着したものを多数採集しましたが、これらの中でとりわけ目を引いたのは、この図の左上にある3つの堅果が合着したものでした(図8-559-5参照)。
シリブカガシで3つの堅果が合着したものはよく目にしますが、それらはオニギリのように3つの堅果が全てへそから首まで一体化したような形態のものがほとんどです。ですから、このように3つの堅果の内の1つだけとは言え、へそに近い部分だけで隣の堅果と合着した躍動感溢れる姿形のものは、とても珍しいのではないかと思います☆同園では、 毎年このような変わり種に遭遇できるというわけではありませんが、来年の秋にもまたここで探索してみようと思っています。
(注)
このHPの中で繰り返し述べていますが、私はマテバシイ属の殻斗が複数の殻斗が合着して構成されたものだとは考えておりません。なぜなら、私のこれまでのフィールド調査において、マテバシイ属の殻斗が合着したものでないことを示唆する事象は数多く目にしてきましたが、その逆は現在に至るまで皆無だからです。その事を端的に示す例については、セクション32を参照願います。