雑記557. 2024.11.21
“ これが一年成のアベマキのドングリです☆ 第3例 ”
この秋、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にあるアベマキの個体に続き、摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] の個体にも一年成のドングリが結実しました(*)。今回、2個目のドングリ(図8-557-1参照)も色づき始めたので、樹上から強制採取しました。
* 雑記555、雑記556を参照願います。
第2例と同様に、一年成のドングリが結実した部分を枝ごと採取すると、ドングリが結実した果軸の後方には確かに複数の側芽が立っており、昨年までに成長した旧枝と、今年新たに伸長した新枝の境界部分が明確に見て取れました。(図8-557-2参照)。
こちらも第2例とほぼ同時期に堅果が色づき始めたので、この個体の二年成のドングリと比べて結実までのタイムラグはおよそ2ヶ月になります。
次に、採取した枝を向軸側から見ると、第2例と同様に、果軸の腋には一年成の確かな証拠とも言える普通葉が残っていました(図8-557-3参照)。
さらに、この個体における典型的な二年成のドングリと今回採取した一年成のドングリを比べると、サイズはほぼ同じ(図8-557-4参照)で、堅果の重量(=5.5g)についても二年成のもの(=5〜7g)と同程度であることが確認できました(図8-557-5参照)。
最後に余談になりますが、これまで国産のドングリの樹を調査してきた結果、とりわけ幼果の異常成長が顕著な樹種はアベマキとマテバシイの2種でした。アベマキについては、このHPで一年成に転換したドングリの事例を度々紹介してきましたが、近い将来、もしかするとマテバシイでも同様のシチュエーションが確認できるかもしれません。
国外に自生するアベマキやマテバシイの仲間の中には、春に開花してその年の秋に結実する一年成の個体が存在するそうです。二年成の樹木の中に、少数ながら一年成の個体が存在する理由を明らかにする上で、このHPで取り上げた二年成から一年成への転換の過渡期にある個体は、極めて重要な位置づけにあると私は考えています。