雑記556. 2024.11.19
“ これが一年成のアベマキのドングリです☆ 第2例 ”
この秋、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にあるアベマキの個体に続き、摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] の個体でも一年成のドングリが結実しました(*)。今回、2個結実した内の1個が色づき始めたので、先行して樹上から採取しました(図8-556-1参照)。
* 雑記555を参照願います。
一年成のドングリが結実した枝を見ると、ドングリが結実した果軸の後方には複数の側芽が立っていました。また、昨年までに成長した旧枝と、今年新たに伸長した新枝の境界部分が明確に見て取れました。繰り返しになりますが、これは紛れもなく今年の春に咲いた花が結実した一年成のドングリです(図8-556-2参照)。
以前、西神中央公園で採取した一年成のドングリは、同じ個体の二年成のドングリに比べて結実までにおよそ1ヶ月のタイムラグがありましたが、今回採取した摂津伊丹廃寺跡の第2例は、この個体の二年成のドングリが9月中旬頃に結実することから、およそ2ヶ月遅れで結実したことになります。
次に、この個体の典型的な二年成のドングリと今回採取した一年成のドングリを比べてみると、サイズはほぼ同等でした(図8-556-3参照)。一年成のドングリの方が、殻斗の鱗片が太くて果皮に張りがあるように見えるのは、二年成のドングリは1.5ヶ月前に採集したものなので、その分だけ乾燥が進んでいるからです。
さらに、殻斗から堅果を取り出して重量を測定してみると、一年成のものは6.1gでした。一方、二年成のものは9月末にこの個体の樹下で採集した時に測定した時には5.9gでした。この個体の二年成の堅果の重量は、だいたい5〜7gの範囲にあるので、重量についても一年成と二年成はほぼ同等でした。
最後に、採取した枝を向軸側から見ると、果軸の腋には一年成の確かな証拠とも言える普通葉が残っていました(図8-556-5参照)。そして、その果軸のすぐそばには、今年の春に咲いて来年の秋に二年成のドングリとして結実するために越冬準備に入った幼果が認められました(同図下段の赤丸で囲んだ部分)。同じ個体の同じ枝に咲いた雌花序なのに、この違いはいったい何に起因するのでしょうか。