雑記555. 2024.11.15
“ 再び、年成の壁を破る ”
 3年前に、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にあるアベマキで、春に咲いた雌花序がその年の秋に結実しました(*)。それは、この個体に結実したたくさんのドングリの中の1つだけでしたが、おそらく国内にあるアベマキで確認された二年成から一年成に転換したドングリの第一号ではないでしょうか。
 そして、その後も地道に調査を続けてきた結果、今年の秋、摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] にある個体にも、一年成に転換したアベマキのドングリが結実しているのを見つけました☆ しかも、今度は2個もなんです〜♪♪
  * 雑記442、セクション31を参照願います。
 西神中央公園の個体と同様に摂津伊丹廃寺跡の個体も、開花した年によって半数以上の雌花序に異常成長が認めらますが、そもそもドングリの樹の年成というものが不変ではない可能性について、はじめて私に示唆してくれたのがこの個体でした(**)
** 雑記365、セクション31を参照願います。

 今年の初夏に確認した時には、例年に比べて異常成長した雌花序の数はかなり少なく、せいぜい全体の1割程度といったところでした。ですから、それらの中から一年成のドングリが結実するとは予想もしていませんでしたが、10月になって二年成のドングリが全て落下した後も、例年以上に大きく成長した幼果が樹上に多数見受けられました。

 例年であれば、それらは10月の末頃までに枯死してしまいます(図8-555-1参照)。ところが、今年はそれらの内の2個が10月に入っても成長し続け、10月末にはまだ完熟とは言えませんが、すっかりドングリらしい姿へと変貌を遂げたのです(図8-555-2、3参照)。ちなみに、図の中にある赤い丸で囲んだ側芽は、これらのドングリが今年の春以降に出現した枝に結実したものであることを示す証拠です
(*)

 
 この個体の二年成のドングリは、9月上旬〜中旬にかけて結実し、9月末にはほぼ全てが地面に落下します。西神中央公園の個体では、二年成と一年成のドングリが結実するのに、およそ1ヶ月のタイムラグがありましたが、この個体では10月末の時点で既に1.5ヶ月になります。これらのドングリは、何れも樹上の高所にあるため、現在のところ手に取って観察することができませんので、後日堅果が色づき始めてから強制的に採取し、あらためて詳細をご報告いたします。

(参考)
 アベマキでは、茶色く色づいた二年成のドングリが全て落下して一月以上が経っても、まだ緑色のドングリが樹上にあることがしばしばあります。一年成のドングリが結実した時とシチュエーションがよく似ていますが、ほとんどの場合、その個体の他のドングリよりも成長が遅いだけなのです。ドングリの花を見ていると、その個体の花期よりも2〜3週間ぐらい遅れて咲く花がありますが、それと同様に、同じ個体でも一月程度遅れて結実するのはよくあることです。

 図8-555-4はその一例で、摂津伊丹廃寺跡にある一年成のドングリが結実したのと同じ個体に、二年成のドングリが全て落下してから一月近くが経過しても、まだ緑色のドングリが樹上にある様子を撮影したものです。ドングリが結実した枝の下方に側芽が見られないことから、これらが一年成ではなく、二年成のドングリであることは明かです。