雑記547. 2024.10.11
“ コナラに分類します ”
一口にナラガシワと言っても、それらの樹皮の形態は様々です。縦方向に割れた樹皮が部分的に剥離したものが一般的ですが、図8-547-1の右下のように、縦方向に割れた樹皮がほとんど剥離しないコナラとよく似た形態のものもあります。
さて、港湾緑地南公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にはたくさんのナラガシワが植栽されていますが、その中にコナラなのかナラガシワなのか判別に苦慮する個体があります(図8-547-2参照)。葉の形はコナラに近いのですが、葉身は小さなコナラ様のものから、大きなナラガシワ様のものまで様々です。しかも、年によってナラガシワにそっくりな形態の葉が混在する事もあります。
一方、樹皮は剥離しておらず、ナラガシワよりもむしろコナラに近い形態です。ただ、前述した通り、ナラガシワの中にも少数ながらコナラに近いものもあるので、樹皮の形態は両者を判別する上で参考程度にしかなりません。
さらに、この個体に結実したドングリをみると、典型的なコナラよりもやや大きめですが、同園に植栽された大きなナラガシワに比べるとかなり見劣りします。また、へそのサイズが胴直径に対してかなり小さいこと(*)や、殻斗がナラガシワのものほど肉厚でないことから、ナラガシワよりもむしろコナラのドングリに近い特徴を有しています。
以上の点から、この個体はナラガシワとコナラの中間的な特徴をもつ交雑種と思われますが、葉の形態にコナラの特徴がより鮮明に現れていることから、私の経験上この個体はコナラに分類します(**)。
* セクション20-3を参照願います。
** コナラ、ミズナラ、カシワ、ナラガシワの交雑種については、クヌギとアベマキの交雑種と同様に、樹皮や果実ではなく、葉の形態により支配的な樹種の特徴が現れる傾向があります。