雑記541. 2024. 9.11
“ マテバシイでは珍しい形態です ”
マテバシイ属の殻斗(*)は、1つの開口部が1個の堅果を包含したものが一般的ですが、偶に複数個の堅果を包含したものに出会うことがあります。図8-541-1はマテバシイのドングリで、1つの開口部が2個の堅果を包含したものの例です。
* 一般に、マテバシイ属の殻斗は複数の殻斗が合着したものだと考えられていますが、私はその考えに賛同できません。なぜなら、マテバシイ属の殻斗が合着したものでないことを示唆する事象なら数多く目にしてきましたが、その逆は現在に至るまで皆無だからです。
この図の黄色の枠で囲んだ2個の堅果は、殻斗の1つの開口部の中でそれぞれ独立していますが、他に2個の堅果が合着して一体化したものもあります(図8-541-2参照)。因みに、国産のマテバシイ属の樹木はマテバシイとシリブカガシの2種類ですが、このような事象は前者では稀ですが、後者ではそれほど珍しいものではありません(**)。
** 雑記374を参照願います。
さて、マテバシイでは珍しいこの形態ですが、これまでに私が確認した、1つの殻斗の開口部が包含した堅果の最大数は3個です。但し、3個の堅果は合着して全てが一体化したもの(***)が唯一で、各々の堅果を独立して包含したものについては皆無でした。
ところが、先日訪れた山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] で、かつてこの形態のドングリを一年に数10個も結実したことがある個体から、3個の独立した堅果を包含したものが見つかりました(図8-541-4参照)。かつて目撃した時のように、今年もこの個体の樹上には、数えられる範囲で同様の形態のドングリが30個以上結実していましたが、3個の堅果を包含したものはこれだけでした。
*** 雑記360を参照願います。
開花したばかりのマテバシイの幼果で、図8-541-5のように1つの殻斗の元になる器官の上に3個の雌花が集結した様子を、私はいくどか目にしたことがあります。この図の3個の雌花が集結した箇所は、このまま無事に成長すれば、1つの殻斗の開口部が3個の堅果を包含したドングリになるはずです。でも、それらが結実したことは一度もありませんでした。たぶん、今回紹介した事例も含めて、マテバシイのドングリで1つの殻斗の開口部に3個の堅果を包含することは極めて珍しいのではないでしょうか。因みに、シリブカガシのドングリで3個の堅果を包含したものについては、マテバシイとは比較にならないぐらいよく見かけます。