雑記054. 2011. 9.18
“ コナラのドングリの豊凶について ”
 一昨日、大阪府堺市にある大泉緑地に行ってきました。同園はクヌギのドングリの豊庫ですが、例年だと9月の今頃には結構な数量が落下しているのに、今年はサッパリでした。但し、樹上にはたくさんのドングリがあったので、成熟する時期が若干後方にシフトしているだけなのかもしれません。せっかくの訪問なのにちょっと残念でしたが、園内で例年真っ先に落下する個体だけは、数はまだ少量でしたが、いつも通りの瑞々しい姿で私の来訪を歓迎してくれました(図8-54-1参照)。

 クヌギはこれからまだ期待出来そうでしたが、コナラについては園内のどこを探しても落下しておらず、樹上にもその姿が確認出来ませんでした。2007年の大豊作以来、ここではコナラのドングリの不作年が続いています。元来、コナラのドングリは豊凶の差が激しく、しかも不定期にしか結実しないので、こんな状況でも致し方無いのかもしれませんが....。

 今回は大した収穫も無かったので、コナラのドングリの豊凶についてこれまで私なりに調査してきたことをお話します。実は、2003年から現在に至るまでの9年間、自宅の近隣にある深田公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] に植栽された6体のコナラについてドングリの落下数量(成熟体のみ)を調べてきました。

 調査対象のコナラは、全て園内の中央付近に位置する芝生広場の半径20mの範囲内(図8-54-2参照)にあり、いずれも樹高(4〜6m)や幹回り(50〜65cm)が同じぐらいの比較的樹齢の若い個体で、土壌、日照、風雨量は勿論の事、虫害に晒される環境にいたるまで、ほぼ同じ条件下に植栽されています。ただ、これらは同じ種類でもドングリや葉の形態が幾分異なることから、遺伝的な形質が多様な個体と考えられます。

 表8-54-1は、これらの個体から落下したドングリの数量の推移をまとめたものです。調査と言っても、採集の片手間にやっているので、厳密に落下したドングリの数量を全てカウントしたわけではありません。ドングリが落下する時期に、200個以上成熟したものをカウントすれば◎とし、それ以下の数量については○、△、×の計4段階で大雑把に評価しました(*)

 この表を見ると、同じ環境下にも関わらず、ほぼ隔年にドングリを結実するもの(表中、個体番号4)もあれば、9年間でたった1度だけしか結実しなかったもの(表中、個体番号1)もあり、個体毎に全く違う挙動を示しており、結実に関して個体差が大きく関与していることが判ります。おそらく、里山等でドングリの豊凶があるのは、その地域を構成するコナラの遺伝的形質が均質で個体差が小さいゆえに、結実に関して集団的な挙動(生り年と不作年)を示すのではないかと考えています。

 では、遺伝的形質が多様だと思われる大泉緑地の様なところでも、豊凶があるのは一体どうしてなのでしょうか。残念ながら、その理由については私自身が納得出来る回答がまだ見つかっていません。ただ、もともとコナラのドングリが結実しにくいことを考えると、気象条件に恵まれて、なおかつ個体間の結実周期がマッチした時にだけ豊作年が訪れるのであって、それ以外の年は基本的に特定の個体(ドングリを結実し易いもの)を除くと不作であることが、コナラにとっては当たり前なのかもしれません。
* 堅果のへそ(離層の痕跡)がしっかりと形成されているものだけを、成熟したドングリと見做します。