雑記531. 2024. 5.15
“ 元気です!ハナガガシ♪♪ ”
 数年前からドングリの芽生えにトライしています。いつもお世話になっている編集工房ノームの飯田猛さんから、度々雑誌等に掲載する写真撮影のご依頼を頂いていたのがキッカケです。ただ、当初はドングリを土に蒔いてから長期間に亘って毎日水やりをしなければならないことや、春になって茎が伸長し始めてからも、虫による食害や過度の日照によって、撮影前に本葉が傷んでしまわないように注意しなければならない等、気を遣うことが多いせいか、なかなかドングリ探索のように楽しむことができませんでした。ところが、毎年トライする内に、芽生えに関する興味深い知見が得られるようになるにつれて、少しずつではありますが関心をもって取り組めるようになってきたのです。
 とりわけ、昨年の秋から今年の春にかけては、年内に出版予定のドングリの本に掲載する芽生えの写真を撮影するために、大量のドングリの芽生えにチャレンジしています。ブナ、イヌブナ、クリを除く国産の19種類のドングリを複数の個体から採集してきて、それらの中から各々10数個、多いものは30個ぐらいをビニール製の簡易ポットに入れて毎日の水やりを欠かさなかった結果、種類によって多少の差はありますが、全ての種類のドングリが発根して順調に芽生えつつあります。

 これまでの状況について簡単にまとめると、落葉樹のコナラ、ミズナラ、アベマキ、カシワが4月のほぼ同時期に芽生え、少し遅れて5月の上旬にクヌギとナラガシワが芽生えました。一方、常緑樹は4月中旬〜下旬にかけてウバメガシが芽生えたものの、その時点で発根すらしていないもの(アラカシ、イチイガシ、シリブカガシ、アカガシ、ツクバネガシ、ツブラジイ)や、既に発根はしたものの未だ茎が現れていないもの(スダジイ、マテバシイ)が目立つ中で、ウバメガシから遅れること約一週間でハナガガシが芽生えました(図8-531-1参照)。

 ハナガガシのドングリは、昨年の12月下旬に高知県の土佐市(*)で採集したものですが、採集した時には既に果皮が退色していたことから、たぶん結実したのは11月下旬〜12月上旬頃ではないかと思われます。ハナガガシと同様に、ウラジロガシとシラカシもほぼ同時期に結実したものを採集してきて、それぞれ12個ずつ育ててきましたが、今月の11日の時点で発根して茎を伸ばしたものはハナガガシが9個、ウラジロガシが8個、シラカシが7個でした(図8-531-2〜4参照)。ちなみに、その他のドングリは発根しなかったか、あるいは発根途中で枯死しました。この3種の間で発根率に大きな違いは無さそうですが、ハナガガシの芽生えのスピードは同じアカガシ亜属の中でも刮目に値しました。

 ハナガガシは環境省レッドリストの絶滅危惧類に指定されていますが、この元気な芽生えの様子を見る限り、種としての生命力になんら問題は無さそうです。全ての撮影が終了したら、ハナガガシの種の存続に貢献すべく、どこか適当な場所を見つけて植樹してみようと思っています♪
* 雑記522〜524を参照願います。