雑記528. 2024. 5. 5
“ まるで、ハエトリグサのようです♪ ”
 国産のコナラ属で、季節外れに開花を繰り返す個体数が最も多いのは、コナラではないでしょうか。私自身、これまでに数えきれないコナラでこの現象を目撃してきました。そして、個体毎にそれらの花序の形態を丹念に観察してきた結果、個体間は勿論の事、同じ個体でも開花した年や樹齢によって大きな違いがあることが判ってきたのです(*)
 とりわけ、服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] に植栽された個体は花序の形態がバラエティに富んでおり、毎年花期が訪れる度に、それらの奇想天外な姿形に驚かされています
(**)
  * セクション30-1を参照願います。
** セクション33を参照願います。


 先日、服部緑地を訪れた時も、この個体は期待に違わぬ様々な形態の花序を見せてくれました。10mm前後の短い花軸に群集した雌花序(図8-528-1参照)、3果の雌花序(図8-528-2参照)、2果の雌花序の内部から伸長した極小の花軸に咲いた単果の雌花序(図8-528-3参照)等、いずれも季節外れに開花したコナラの花序形態としては珍しいものばかりですが、もっとも印象深かったのは、20本前後もある多数の花柱を立てた雌花序でした(図8-528-4参照)。花柱が上下2段に分かれて整然と並ぶその姿は、まるで食中植物のハエトリグサのようでした。

 
 ところで、これまでに目撃したコナラ属の単果の花柱の最多数は16本
(***)でしたが、この雌花序についてはその数をさらに上回っていました(図8-528-5参照)。単果で花柱の数がこれほど多いものは極めて珍しいのですが、見た目は単果でも実は多果であるという可能性がないわけではありません。なぜなら、多果の中には隣接する雌花同士が合着して、花柱を含めて両者が完全に一体化しているケースが稀に存在するからです。
 以前、単果と多果は花柱の立ち方を見れば区別できると述べました(***)が、これほどまでに花柱の数が多いものを目の当たりにすると、花柱の配列状態だけを見てこの雌花序を単果と判断してよいものかどうか悩ましいところですが、もし仮にこの雌花序が多果であったとしても、このようにユニークな形をしたものには、なかなかお目にかかれないのではないでしょうか。
*** 雑記458を参照願います。