雑記524. 2024. 1.12
“ 四国 高知でドングリ探索 その3 ”
 午前中に、松尾八幡宮と闇谷神社の社寺林を訪問して、午後からOさんの自宅がある須崎市上分の山岳地帯に行く予定でしたが、その前に同市内の加茂神社にあるイチイガシの巨樹を案内していただきました。

 イチイガシの巨樹については、以前春日大社 [ 所在地 : 奈良県奈良市 ] や石上神宮 [ 所在地 : 奈良県天理市 ] にあるものを見たことがありますが、加茂神社の個体は前二者とは比較にならないぐらい巨大なものでした。巨樹の脇に立つ看板の説明書きによると、昭和48年に天然記念物に指定され、その時点で樹齢400年とあります。天然記念物に指定された時にこの看板が設置されたとすれば、それから半世紀が経過しているので、現在は樹齢450年といったところでしょうか。

 この樹の下にも、僅かばかりのドングリが散見されましたが、手に取ってみるとやはり月並なものでした。四国最大のハナガガシに次いで、この日2体目に遭遇した巨樹も、残念ながら私のジンクスを打ち破ることはできませんでした。

 
 イチイガシの巨樹を訪問した後は、最寄りのハナガガシの生育地までOさんの軽トラックに載せていただき、そこから先は徒歩で山岳地帯を探索しました。ハナガガシは山中に点在しており、一箇所に大小合わせて数体が生育していました。大きなものは幹直径が600mm前後もある巨木(図8-524-2参照)で、山の急斜面に立つハナガガシには板根のようなものが発達していました(図8-524-3参照)。

 
 山全体からするとハナガガシの個体数はごく僅かであり、この樹木の特徴にかなり精通していないと、広大な山中からハナガガシを見つけ出すのは容易では無さそうでした。Oさんによると、昔は今よりもはるかに個体数の多かったハナガガシは、スギやヒノキの植林によって伐採され続けた結果、現在のような極めて限定的な生育分布を示すようになったのではないかとの事でした。

 図8-524-5は、山岳地帯の個体から採集したドングリの例です。極端に果皮が退色したものも多く、午前中に訪問した社寺林と同様に、ここでも地面に落下したドングリの多くは、結実してからかなりの時間が経過したものと思われます。

 最後になりますが、今回の探索を通して私は多くの個体から採集したドングリの花柱を観察しました。図8-524-6は、松尾八幡宮、闇谷神社、そして上分の山岳地帯から採集したドングリの例です。

 以前、京阪神で私が採集したドングリや、その他の地域で多くの方々が採集されたものの首回りを観察した結果、ハナガガシのドングリは花柱が束になって開かないことを指摘しました
(*)。今回、一挙にこれまで観察してきた数倍もの個体から採集したドングリについて再調査してみると、それらのほとんどは図の(a)、(b)、(d)のように花柱全体が1本の束のような形をしていました。ただ、ごく僅かですが、(c)や(e)のように柱頭部分だけが微かに開いているものもありました。ですが、柱頭以外の部位については密着していることから、基本的にハナガガシの花柱は束になる傾向があると考えて間違いないでしょう。
* 雑記207を参照願います。

 簡単ではありますが、以上で今回の探索ツアーの記事は終了です。わずか1日でしたが、とても濃密な遠征でした。この日は早朝から寒さが厳しく、午後には粉雪が舞っていました。そんな中、一貫して丁寧にガイドして下さったOさんには本当に感謝しております。ここであらためて御礼申し上げます。