雑記523. 2024. 1.11
“ 四国 高知でドングリ探索 その2 ”
 松尾八幡宮に続いて案内していただいたのは、同市内にある闇谷神社 [ 所在地 : 高知県土佐市 ] でした。ここは、松尾八幡宮ほど個体数は多くありませんが、とにかく大きくて立派なハナガガシが4体もありました。


 とりわけ、四国最大の巨樹は圧巻で、幹直径が優に1mを超えるその姿形にすっかり見惚れてしまいました(図8-523-2参照)。ただ、この個体から採集したドングリは、その立派な様相からは想像できないぐらい矮小なものでした(同図下段右側参照)。私のこれまでの経験から、ブナ科の巨樹が結実したドングリはその種の平均的か、あるいはそれに満たないサイズというジンクスがありますが、このハナガガシもそれを覆すことはできませんでした。

 
 四国最大の個体を含む3体の大木については、どれもドングリの落下量は低調でしたが、参道沿いに位置する個体だけは、豊作と呼ぶに相応しいぐらい大量のドングリを落としていました。残念ながら、闇谷神社のドングリもほとんどは既に果皮の退色が進行していましたが、樹下の広範囲が柔らかい土壌や厚く降り積もった落葉で覆われていたので、傷や欠損が少ない良好なドングリを採集することができました(図8-523-3参照)。

 
 ところで、私は堅果と同じぐらい果軸や殻斗に興味があるので、今回の探索を通して出来る限り多くの殻斗(果軸付)を採集しました。そして、採集した400個余りの果軸には1〜3個のドングリが結実していました(図8-523-5参照)。同図の右側にあるのは、ちょっと珍しい4個のドングリが結実した果軸ですが、これは当日Oさんから頂いたもので
す。

 このように、ハナガガシの果軸には通常1〜3個が結実しますが、実際のところ多いもので1つの果軸にどれぐらいのドングリが結実するのでしょうか。その答を得るには、多くの個体で1つの花軸に咲く花の数を調べる必要がありますが、自生しているハナガガシの多くは鬱蒼と繁る樹木の高所に花を咲かせるので、花期に花軸を観察するのは非常に困難です。そこで、以前オキナワウラジロガシで試行したのと同じ手法で、ドングリが結実した果軸に残る花の痕跡を数えてみることにしました(**)
** 雑記489を参照願います。

 その結果、採集した中で比較的長めの15mm程度の果軸に、5個の花の痕跡があるものが4つ見つかりました。図8-523-6にその1つを例として示します。この果軸には2つの花が結実して2つの殻斗を残していますが、それ以外の3つの花はおそらく幼果の段階で脱落したものと思われます。以上のデータを基に、果軸の長さや結実したドングリのサイズから推測すると、1つの果軸に結実するドングリの数は多くても5個前後ではないかと思われます。
 次回(その3)は、Oさんがお住まいの須崎市上分の山岳地帯に自生するハナガガシについてご紹介します。