雑記522. 2024. 1.10
“ 四国 高知でドングリ探索 その1 ”
 昨年の12月中頃に、以前からハナガガシに関する貴重な情報を提供して下さっていた高知県須崎市にお住まいのOさんから、土佐市内の松尾八幡宮でハナガガシのドングリが多数落下しており、それ以外の社寺林や山岳地帯の個体からも落下が認められるとの連絡がありました。来高の際には、年末のお忙しい最中にもかかわらず、自生地を案内して下さるとの事。滅多にない機会でしたので、お言葉に甘えて22日に日帰りで高知までドングリ探索ツアーに行って参りました。
 ハナガガシは、九州南部と四国の一部にだけ自生するアカガシ亜属のドングリの樹です。とりわけ四国では、高知と愛媛の2県だけで、しかもそれらの多くは生育地が社寺林に限定されています。Oさんは社寺林以外にも高知県内の山岳地帯に自生する個体について丹念に探索しておられるので、高知県内にある主な生育地を一日で探索してまわるには、Oさんのご厚意無くしてはありえなかっただろうと、この記事を書きながらあらためて痛感しております。


 さて、当日最初に案内していただいたのは、四国のハナガガシの社寺林で広く知られている松尾八幡宮 [ 所在地 : 高知県土佐市 ] でした(図8-522-1参照)。本殿の周囲やそこに至るまでの参道沿いには、大小合わせて50体を超えるハナガガシが自生しており、樹高が20m、幹直径が500〜600mmもある大きな個体が数多く見られました(図8-522-2参照)。

 ここでは、多くの個体から様々な形状のドングリが落下していました。球形や卵形のものが中心でしたが、縦方向にやや細長いものや堅果の中程まで微毛が密生したものも若干数認められました。ただ残念ながら、それらの大半は既に果皮の退色が進行しており、普段私が採集している結実したばかりの新鮮なドングリにはほど遠い状態でした(図8-522-3参照)。
 Oさんから頂いたメールによると、ドングリが落下し始めたのは12月半ば頃だったので、結実してすぐに落下していれば、今回の訪問は新鮮なドングリを採集する絶好のタイミングだと想定していたのですが、どうやらここのハナガガシは結実しても殻斗と堅果の間にできる離層の形成が不十分なため、結実してからかなり時間が経たないと落下には至らないようでした。退色の様子から推測すると、おそらく11月の中旬〜下旬には結実しており、そのまま殻斗に着いた状態で徐々に退色が進み、半月〜1ヶ月が経ってポツポツと地面に落下してきたものと思われます。

 さらに、松尾八幡宮ではドングリに寄生する昆虫について貴重な情報が得られました。これまでに、ドングリの殻斗と堅果の接続部分に寄生するタマバエの幼虫について、マテバシイ、オキナワウラジロガシ、ツクバネガシの3種でその存在を確認してきました(*)。そして今回、あらたにハナガガシのドングリからも、同じ部位に前三者とは異なる種類と思われるタマバエの幼虫が寄生しているのを見つけました(図8-522-4参照)。

 寄生していたのは1つのドングリだけでしたが、強固に繋がった殻斗と堅果を強引に引き離すと、へその辺りにサイズが異なる幼虫が23匹も潜伏していました。狭く閉ざされた空間から開放された時には、幼虫達はすでに衰弱しており、動きはとても緩慢でした。
 これで4種のドングリからタマバチの仲間の幼虫が見つかりましたが、この様子だとおそらく他の種類のドングリにもまだ見ぬタマバチの仲間が寄生しているのではないかと思われます。
* セクション9-2-1を参照願います。

 次回(その2)は、松尾八幡宮の次に案内していただいた、同市内の闇谷神社のハナガガシについてご紹介します。