雑記513. 2023.10.24
“ 摂津伊丹廃寺跡のアベマキ その3 ”
 摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] は、多様なアベマキのドングリが採集できる県内でも有数の採集スポットです。ここで採集できるちょっと変わったドングリをシリーズ(*)で展開していますが、3回目は廃寺跡で最も大きな個体に結実するとても立派なドングリです(**)
  * 雑記402(1回目)、雑記471(2回目)を参照願います。
** この個体に結実するドングリの大半は、廃寺跡の敷地内に落下しますが、厳密には廃寺跡地に隣接するYさんの自宅の庭に植栽されています。

 この個体は、同種の中ではかなり早い時期にドングリを結実します。年によって多少前後しますが、だいたい8月末頃からドングリが降り始めて、9月上旬には概ね落下が終了します。アベマキ特有の太くて頑丈そうな首回りやザラザラした果皮の触感が、大きくて立派なドングリをより素敵に見せてくれますが、最近採集したドングリを見ると、私が初めてこの個体から採集した頃に比べて、少しばかり小さくなったような気がします。

 このドングリは私の大のお気に入りで、初めて採集した当時のものを今でも大切に保管しています。図8-513-4は、先日保管している容器から取り出して、図8-513-2と同じシチュエーションで撮影したものです。

 アベマキのドングリは、乾燥すると体積が20%程度減少(***)
します。ですから、これらのドングリは結実した時よりもかなり縮んでいるわけですが、それでも今年採集したものに比べると、はるかに大きいことは一目瞭然です。しかも、最近のドングリはやや寸胴で、小太りの割合が増しており、まるで中年太りのオッサンのようです。
*** 雑記088を参照願います。

 このドングリの最新のディティールについては、図8-513-5をご覧下さい。

 
 ところで、このHPを開設した当初から、この個体については多果ドングリを結実しやすい稀有なアベマキとして度々紹介してきました。私が出会ったアベマキの中で、今のところ多果ドングリの結実が確認できたのは、この個体しかありません。実物例については、セクション3-1-2のアベマキの項で紹介していますが、今年の秋もまたあらたな多果ドングリが結実しました(図8-513-6参照)。

 これまでは堅果だけか、あるいは殻斗だけを採集するケースがほとんどでしたが、今年は珍しいことに、殻斗と堅果のペアが2セットも見つかりました。図中の上下の殻斗と堅果がそれぞれペアになっています。

 因みに、摂津伊丹廃寺跡にはこの個体の他にも4〜6果が発現した痕跡のあるアベマキのドングリ(****)が数多く見つかっていますので、今後それらの個体にも多果ドングリが結実することを大いに期待しています。
**** セクション3-2-1を参照願います。