雑記512. 2023.10.18
“ クヌギのようでクヌギでない... ”
 セクション20に、クヌギとアベマキの堅果の識別方法を掲載してますが、様々な個体のドングリを相当見慣れた人でも、外観だけでクヌギとアベマキを100%識別することは不可能でしょう。それは、両者が交雑しやすいため、互いの形態的な特徴が堅果に現れる場合があるからかもしれません。

 ただ、これまで私が出会った数多くのドングリの中で、完璧にアベマキの特徴を有する堅果が、実はクヌギであったことはしばしばあります
(*)が、その逆、すなわち完璧にクヌギの特徴を有するにも関わらず、実はアベマキであったことは一度もありませんでした。ところが先日、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] でその逆のケースを目の当たりにしたのです。
* 雑記439を参照願います。

 敷地面積が16haある園内のおよそ3割を占める “ 野鳥の森 ” には、数えきれないぐらいのアベマキが植栽されていますが、それらの中に、どこから見てもクヌギにしか見えないドングリ(堅果)を結実する個体があったのです(図8-512-2参照)。
 クヌギとアベマキの堅果の主な識別ポイントは、首回りの構造の違いにありますが、この堅果にはその部位にアベマキの特徴が一切認められませんでした。それ以外にも、言葉ではうまく表現できないのでセクション20には記載しておりませんが、果皮の触感やへその質感にも両者の特徴が現れることがあります。でも、それらを全て考慮しても、残念ながら私にはこの堅果をアベマキと判定することはできませんでした。

 
 一方、このドングリの殻斗については、アベマキに特有の黄金色の濃い微毛が内壁に密生しているので、容易にアベマキのものと判定できます。今回は、アベマキとクヌギのドングリの中でも非常にレアなケースですが、一筋縄ではいかないドングリの奥深さに改めて感銘を受けました。