雑記050. 2011. 8.24
“ 何も出て来ませんでした ”
 アラカシの堅果から昨年採取した虫瘤(*)について、成虫が出てくるのをひたすら待ち続けてきたのですが、8月の下旬になっても、結局一匹も姿を現しませんでした。クヌギの堅果に形成された虫瘤から成虫を羽化させた時の経験から、極端に低い羽化率 [ ≦10% ] を想定して、600個以上の虫室を用意したのですが、どうやら今回は空振りに終わったようです。

 プラスチックの容器から虫瘤を取り出して解体してみると、確かに幼虫が入っているのですが、モビリティがすっかり低下しており、中には全く動かないものもいました(図8-50-2参照)。ピンセットの先で突いてみると、肌に弾力が無かったので、生きていたとしてもかなり衰弱しているのでしょう。
* この虫瘤については、セクション9-3を参照願います。

 羽化しなかった原因は、一体どこにあるのでしょうか?クヌギやウバメガシの堅果に形成された虫瘤と同様に、虫室の殻は極端に硬く、内部は乾燥していたので、虫室を採取してから直ぐにプラスチックの容器(完全密閉ではありません)に入れて、室内に保管していたのですが、そもそもこれがまずかったのかもしれません。

 自然な環境下では、虫瘤は天日や風雨に晒されることによって、気温や湿度の大きな変化を感じながら羽化するまでの日々を過ごします。それに比べて、室内では比較的温度変化が小さく、冬でも低湿度で暖かい雰囲気が保たれているので、長期間虫室内で暮らす幼虫にとっては、季節感を奪われた、特異な環境下で過ごすことになります。
 クヌギやウバメガシの堅果に形成された虫瘤から成虫を拝むことが出来たのは、単に運が良かっただけで、本来羽化率は周囲の環境に大きく左右されるのかもしれません。

 こうなると、成虫の姿を確認する為に、今年の秋にもう一度虫瘤を採取して、実験してみるしかありません。今度は、室外で水捌けのいい容器の底に土を敷いたところに虫瘤を置いて、容器の上面にネットを被せたものを用意してみようと思います。そうすれば、ほぼ自然な環境下で虫瘤を育成し、なおかつ、羽化した成虫を確実に捕獲出来るはずです。

 それにしても、生物の実験は時間がかかりますよね〜。結果が出るまで、また1年以上待たなければならないんですから....まあ、好きでやってるんだから、気長にやるしかないですよね。