雑記499. 2023. 6.26
“ カシワでは初です〜☆ ”
HPの中で繰り返し述べてきましたが、多果が発現しやすい個体は、その種の中でも極端に長い果軸を着けるものや、しばしば両性形態の花を咲かせるものに多く見られます。
カシワの場合、10〜20mm程度の比較的短い果軸をもつ個体が一般的ですが、中には40mm以上もある長い果軸を着けるものも少なからず存在します(図8-499-1参照)。ですから、そういう個体を対象に調査を続けていれば、いつか必ず多果に出会えるものと私は確信してきました。
ただ、残念ながら京阪神にはカシワそのものがあまり植栽されていない(私の把握している個体で100体弱ぐらい)ので、これまでなかなか好機に恵まれませんでしたが、先日遂に幼果ながら多果を見つけ出すことに成功したのです(図8-499-3参照)。
今回見つけた多果は、予想通り40mm超の果軸や両性形態の花を頻繁に着ける個体から採集しました。1つの殻斗の元に咲いた2つの雌花を殻斗が別々に分けて包含した2果形態ですが、カシワと同じような長い鱗片をもつ樹種(アベマキ等)でこの形態の多果を目にしたのはこれが初めてです(*)
* 殻斗の内側に堅果を分離する仕切りがあるもの(セクション3-1-2 アベマキの項参照)は除きます。
図8-499-3の下段の写真を見ると、2果を構成する一方の果実(右側の図の正面から見て左側の果実)だけが果軸と接しているのが判ります。多果は、1つの殻斗が複数の堅果をまとめて包含するタイプ [ 堅果統合型殻斗 ] でも、各々を分離して包含するタイプ [ 堅果分離型殻斗 ] でも、果実と果軸の接合部はこの形態(2果でも3果でも接合部の面積は単果と同程度)が基本です。
因みに、外見上は多果のような擬似多果(**)の場合は、複数の雌花序が合着することで多果のような形態の殻斗を形成するので、全ての果実が果軸と接しています。要するに、合着した雌花序の数だけ接合部の面積が大きくなっています。ですから、果実と果軸の接合部を見れば、多果と擬似多果は明確に区別することができるのです。
** セクション32を参照願います。
(追記)
7月17日に、同じ個体からあらたに2果の幼果を2つ採集しました。いずれも、前回採集したものと同様、2つの堅果を殻斗が分離して包含するタイプ [ 堅果分離型殻斗 ] でした。