雑記485. 2023. 1.14
“ たぶん、久米島全土に生息しています ”
 今回のツアーを通して、堅果に殻斗がガッチリとついた状態のオキナワウラジロガシのドングリを50個ほど採集しました(図8-485-1参照)。これらは、そのままの状態で持ち帰り、ドングリを保存するために自宅で熱湯処理をする前に、一つずつ丁寧に殻斗を取り外しました。すると、ほぼ全てのドングリからたくさんのタマバエの幼虫が現れました。

 前回のツアーでは、南部山岳地帯の島尻で採集したものからタマバエの幼虫が見つかりましたが、今回は北部山岳地帯のだるま山で採集したものからも見つかりました。おそらく、久米島全域にこのタマバチは生息しているものと思われます。
* 雑記251を参照願います。

 
 図8-485-2は、今回採集したドングリの殻斗を取り外した時の典型的な様子を撮影したものですが、大体1個のドングリに30匹前後の幼虫が居ました。幼虫はどれもかなり衰弱しており、動きの緩慢なものばかりでしたが、これらは結実してから1ヶ月以上が経過したマテバシイのドングリから取り出したタマバエの幼虫の状態と酷似していました。

 マテバシイから採取した衰弱した幼虫は、結局羽化させることができませんでしたが、今回オキナワウラジロガシから採取した幼虫は1000匹を超えていたので、もしかすると何匹かは羽化するかもしれないと少しばかり期待していました。ところが、昨年の12月24日にプラスチックの容器
(**)に入れた幼虫達は、今年の1月10日に確認したら全て死滅していました。成熟後のドングリに長期間閉じ込められて衰弱していたせいなのか、あるいは羽化に成功したマテバシイのタマバエとは異なる種類で、それに対応した羽化のさせ方が必要であったのか原因は不明です。
** 雑記236を参照願います。

 
 採取した幼虫達を羽化させられなかったことは非常に残念ですが、今回採集したドングリに寄生していたタマバチによって、一つだけ非常に重要な知見を得ることができました。それは、タマバエの幼虫が殻斗と堅果の接続部分に寄生しても、ドングリの成長にはほとんど影響しないということです。

 
 図8-485-3は、今回殻斗を取り外した時に、1つのドングリから100匹を超える幼虫が出現した時の様子を撮影したものです。この堅果を解体して中身を確認したわけではありませんが、水の入った桶に入れると堅果は完全に底まで沈んだのを確認したので、この堅果が粃でないことは明らかです。

 以前、タマバエの幼虫が寄生したマテバシイのドングリに粃が数多く見られた
(***)ので、タマバエの幼虫が大量に寄生することによって、ドングリの成長が阻害されている可能性を疑っていました。ところが、オキナワウラジロガシではこれだけ多くの幼虫が寄生していたにも関わらず、ほとんど影響を受けずに問題無く成長していたことから、それは杞憂に過ぎませんでした。マテバシイで幼虫が寄生したドングリに粃が多く見られたのは、単にマテバシイのドングリは本質的に粃が多いことによるものだったと考えられます。
*** 雑記132を参照願います。