雑記484. 2023. 1.12
“ 第3回 久米島ドングリ探検ツアー 中篇 その1 ”

 2日目は終日快晴で、絶好の探索日和でした。まずは早朝から10時頃まで、初日に下見した北部山岳地帯のだるま山に行ってドングリを採集しました。ものすごい数のドングリが落ちていたので、ガムシャラに採集するのではなく、目立ったキズがなくて、形態に特徴があるドングリを選別しながら丁寧に採集したつもりでしたが、10時前にはリュックサックがドングリで満杯になり、あまりの重さに身動きがとれなくなってしまいました。

 この日は、山道沿いの個体を中心に落ちているドングリを採集し、その後、山道に対して数10mに亘って垂直方向に分布する個体を探索しましたが、ドングリを落としていたのは前者の個体がほとんどで、後者については豊作年にも関わらず、ごく限られた場所を除くと、ほとんどの個体が全くと言ってもいいぐらいドングリを落としていませんでした。そのごく限られた場所というのは、山道よりもやや低い位置にある窪地で、なおかつ今回の探検ツアーに訪れる直前に降った豪雨によってできたと思われる水深10cm前後の浅い水溜まりのあるところでした(図8-484-4参照)。

 
 オキナワウラジロガシは植生域を拡張するのに、捕食動物や水流をドングリの輸送媒体として利用します。水流には、定常的な流れのある河川の他に、雨が降った後に一時的に山道を中心に流れる澤があります。久米島の場合は、島内に捕食動物がいないので、ほぼ100%水流を輸送媒体にしています。

 山道沿いは、少量の雨でも澤ができて容易に水流が形成されますが、山道から垂直方向に離れたところでは、相当量の降雨がない限り、水流が形成されない場所が大半を占めています。要するに、そういうところにある個体は、ドングリを結実しても植生域の拡張にほとんど寄与することができないことになります。前回のツアーでは南部山岳地帯の島尻で比較的たくさんのドングリを採集しましたが、やはり今回のだるま山におけるドングリの落下状況と似たような傾向が認められました。

 もしかすると、オキナワウラジロガシは個体周辺に形成される水流に敏感で、水流が生じにくい領域まで拡張した個体は積極的にドングリを結実しないのかもしれません。本件については、まだまだデータが不足しているので、次回以降のツアーでもこの点に留意して調査を続けていきたいと考えています。

 さて、決して十分とは言えない短い探索時間の中で、この日はオキナワウラジロガシらしい大きなドングリを結実する個体をいくつか見つけました。堅果長が最大で40mmに達する細長いもの(図8-484-6参照)や、胴回りの幅が30mmを超える太いもの(図8-484-7参照)など、いずれも採集する手を止めて思わず見惚れてしまうような立派なドングリでした。

 
 あっと言う間の数時間でしたが、最終日の午前中にもう一度だるま山を探索することにして、この日は引き続きKさんの案内で南部山岳地帯の山城と島尻の2箇所を探索しました。というわけで、“ 中篇 その1 ” はここまでで、山城での成果は “ 中篇 その2 ”、そして島尻での成果は “ 中篇 その3 ” であらためてご報告致します。