雑記480. 2022.12.12
“ マテバシイではかなりの珍品です☆ ”

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 マテバシイの果実は、複数個のドングリが合着したような形(*)をしています。我々がよく見るのは、図8-480-1に示すような2個乃至3個の集合体です。4個(4果)以上のものも無いわけではありませんが、それらを目にすることはまずないでしょう。私も相当数の個体を観察してきましたが、これまでにマテバシイで4果以上の発現を確認したのは2体だけです。
* 私は、マテバシイ属の殻斗が複数の殻斗が合着して構成されたものだとは考えておりません。なぜなら、私のこれまでのフィールド調査において、マテバシイ属の殻斗が合着したものでないことを示唆する事象については数多く目にしてきましたが、その逆は現在に至るまで皆無だからです。

 1つは、2013年に山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] に植栽された個体で、4〜5果の幼果を確認しました(**)。もう1つは、2014年に有馬富士公園 [ 所在地 : 兵庫県三田市 ] の個体で、同じく4〜5果の幼果を確認しました(図8-480-2参照)。但し、4果以上が発現したのはその年限りで、それ以降は全く姿を見せなくなってしまいました。因みに、これらはどちらも季節外れに不定期な開花を繰り返す個体です。
** 雑記172を参照願います。

 
 ところが、一方の有馬富士公園の個体で、今年4果以上の高次の多果が再び発現したのです。6月の花期からおよそ半年が経過していましたが、まだ開花した時とほとんど変わらない姿の幼果でした(図8-480-3〜4参照)。2014年に初めて目撃した時も、この個体は20個以上の高次の多果を発現していましたが、今回も同程度の数の発現が認められました。

 
 さらに、1個だけでしたが、マテバシイでは一度も見たことがない6果も発現していました(図8-480-5参照)。マテバシイ属では、複数の雌花序が合着しても互いの殻斗は容易に合着しません。ただ、異なる雌花序の雌花同士が合着するか、あるいはそれらが極端に近接した場合にのみ両者の殻斗は合着します。そうして誕生したドングリをこのHPでは擬似多果ドングリ
(***)と命名していますが、これらは合着した雌花序の数だけ果実と果軸との接合面積が大きくなるので、合着していない1つの殻斗からなる高次の多果ドングリとは明確に識別できます。

 今回目撃した4果以上の幼果は、いずれも果軸との接合面積が1〜3果のものとほぼ同程度だったので、高次の多果であることは間違いありません。引き続き、これらの幼果の成長過程をトレースしていきます。
*** セクション32を参照願います。