雑記479. 2022.12. 6
“ ウラジロガシの紐状殻斗 ”
咲いたばかりの雌花が退化消滅しても、雌花序の基部にある殻斗の元になる器官は、その雌花が存在した事を記憶しています。そして、恰も消滅した雌花が存在するかのように、それを包含するように殻斗を紡ぎます(*)。因みに、図8-479-1はアラカシとシラカシで咲いたばかりの雌花が消滅して、殻斗だけが成長した例です。
このHPでは、これらの殻斗を紐状殻斗と命名し、これまで様々な形態のものを紹介してきました。紐状殻斗は、コナラやウバメガシのようなコナラ亜属の樹種なら、ドングリが結実する頃まで果軸に残存しているのをよく見かけますが、アラカシやシラカシのようなアカガシ亜属の樹種では、結実したドングリといっしょに果軸上にその姿を目にすることはありませんでした(**)。
* セクション26の2項を参照願います。
** 多果を構成する雌花序では、一部の雌花が退化消滅しても残りの雌花が成長することで、結実したドングリの殻斗に紐状殻斗としてその姿を残すことが出来ます。
ところが、先日掖谷公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] でウラジロガシのドングリを観察していたところ、成熟したドングリのすぐ傍に細長い紐状殻斗が残存しているのを見つけたのです(図8-479-3上段参照)。ウラジロガシで紐状殻斗を目撃したのはこれが初めてでしたが、なによりアカガシ亜属の樹種でこの時期まで普通の殻斗と変わらぬ活き活きした姿を呈していたことに驚かされました。
しかも、紐状殻斗のリング状の鱗片をよく見てみると、成熟したドングリの殻斗と全く同じリング数(=7層)だったんです(図8-479-3下段参照)。単にこの時期まで果軸に残存していたのではなく、普通のドングリの殻斗と歩調を合わせるかのように成長し続けてきたんですね〜♪包含する対象(堅果)が失われたにも関わらず、殻斗としての責務を全うしようとする心意気が、この卑小な殻斗からひしひしと伝わってきました☆