雑記472. 2022.10.20
“ どんぐりをお供えしました ”
自宅のある兵庫県三田市は、ハッキリ申し上げて田舎です。不便を感じることも多々ありますが、田舎であるがゆえに自然は豊かなので、数年前から週末になると近隣の山々でプチ登山を楽しんでいます。
私のどんぐり探索は、どんぐりの花が咲き始める4月初旬から結実が終了する1月下旬頃までが活動時期で、それ以外は採集したどんぐりや撮影した写真、データの整理が中心のデスクワークです。そんなわけで、その2ヶ月余りのどんぐり閑散期の体力作りを兼ねて、全行程2〜3時間程度のプチ登山を始めたのですが、数ある山の中で一昨年の末に初めて登ったある山にすっかり魅了されてしまったのです。それは、三田市の中心部からやや北東に位置する羽束山です(図8-472-1参照)。
三田市史によると、羽束山(標高:524m)は隣接する甚五郎山を含めて、南北朝時代に築かれた香下城跡だそうです。同市内では山頂が尖った山が多い中で、なだらかな山頂の羽束山は一際目立つ存在です。その地形を活かして、山頂には観音堂や羽束神社、鐘楼等が築かれています。表側の登山道は石段(当時のものかは不明)で整備されていて、所々に祠や石碑等がありますが、それ以外の人工物はほとんどなく、全体的に俗化されていない雰囲気がとても素晴らしいです。でも、それだけならドングリの閑散期限定のプチ登山の対象の一つに過ぎなかったと思います。
にも関わらず、昨年から現在に至るまで一年を通して、週末は勿論のこと、連休中ともなればほぼ連日のように足繁く訪れる場所になったのには理由があるのです。それは、羽束山の中腹(六丁峠 : 図8-472-1の羽束三山にある矢印のところ)に鎮座する一体のお地蔵さんにすっかり惚れ込んでしまったからなんです(図8-472-2参照)。
これまで見てきたお地蔵さんのような故意に可愛さを強調したり、微笑んでいる姿に心を動かされることは無かったのですが、凛とした中にホッコリとした愛らしさを秘めた表情をもつこのお地蔵さんに、私は一発でノックアウトされてしまいました。さらに、このお地蔵さんが鎮座する場所がとっても静謐で、お地蔵さんと二人だけで向き合っていると、ここだけがまるで別世界のように感じられるのです。もしかすると、このお地蔵さんをより素敵に演出するために、石組みや樹木の配置に拘った巧みな仕掛けがなされているのかもしれません。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、羽束山を含む周辺の山々にはアベマキやコナラ、アカガシ、ウラジロガシ、アラカシの木がたくさん植栽されています。山のどんぐりなので、樹木の数は多いのですが、形態の多様性は乏しく、虫食害されているものも多いのですが、山を登りながら山道に落ちているどんぐりを手に取って愛でるのは、この時期ならではの楽しみの一つです。
ちょうど先月の末頃からアベマキやコナラのドングリが目につき始めたので、今年はお供え物といっしょにお地蔵さんにも山の幸を愛でていただくことにしました。お供え用の皿以外にもう二皿持参して、そこに山道で拾ったどんぐりを少しばかり盛っておいたところ、次の週末に訪れた時には、なんと皿のどんぐりが一杯に増えていて、おまけにお地蔵さんの足元にまでどんぐりが供えられていたのです(図8-472-3参照)☆☆
たくさんのどんぐりで飾られた賑やかな台座ですが、お地蔵さんお気に召していただけましたでしょうか?
アベマキやコナラのどんぐりは落下のピークが過ぎましたので、これから来月にかけてはアカガシやウラジロガシ、アラカシのどんぐりが降ります。今年の秋は、羽束山でとれたどんぐりを愛でながら、静かなひと時をお地蔵さんと二人で語り合いたいと思います♪♪
(追記1)
お地蔵さんにどんぐりをお供えしてから一月が経ちました。お地蔵さんの台座の周りには、訪れるたびにどんぐりがその数を増しています。
(追記2)
羽束山の頂上に立つ羽束神社の裏手にあるアカガシに、たくさんのドングリが結実しました。一昨年、昨年と少量しか結実しなかったので、ほぼ全てのドングリが虫食害されていましたが、今年は食害されていないきれいなドングリがたくさん採集できました。