雑記457. 2022. 5. 7
“ 大量に分岐した雄花軸 ”
  兵庫県神戸市の西区には、たくさんのドングリの木が植栽された広大な緑地が点在しています。高塚台5丁目にある緑地もその一つです。ここにあるドングリの木は、アラカシ、シラカシ、ウバメガシ、マテバシイ、スダジイの5種類で、関西ではごくありふれたものばかりですが、同じ種類でも特異な形態の花やドングリを着ける個体がいくつかあって、なかなか見応えがあります。

 今回紹介するシラカシも、コナラ属ではなかなか見られないちょっと変わった形質をもっているのです。その形質とは、雄花軸が分岐していることです(図8-457-2参照)。

 セクション21の7項で、分岐したクヌギの雄花軸の例を紹介していますが、他にも複数の樹種で僅かばかりの雄花軸が分岐している様子をこれまでに幾度か目にしてきました。ただ、このシラカシで分岐している雄花軸は、それらとは比べものにならないぐらい多いのです。

 
 昨年、このシラカシで初めて雄花軸が分岐しているのを目撃しましたが、今年も同様にほとんどの新枝で雄花軸の分岐が認められました。また、これまで目にしてきたものは、ほとんどが雄花軸の先端付近で分岐していましたが、このシラカシでは軸の根元付近で分岐したものばかりでした(図8-457-3参照)。

 太古の昔は、コナラ属でも分岐した果軸はごくありふれた形態であったと思われますが、残念ながら現在ではほとんど見られなくなりました。そういう点でこのシラカシは、同種の中でも稀少で、かつ貴重な存在と言えるのではないでしょうか。