雑記452. 2021.12.10
“ まさか、コナラで見つかるとは... ”
 1つの殻斗が複数の堅果を包含する多果ドングリには、大きく分けて2つのタイプがあります(図8-452-1参照)。1つは、複数の堅果を殻斗がまとめて包含するタイプ [ 図中 @ ]です 。そしてもう1つは、殻斗が複数の堅果を分離して包含するタイプ [ 図中A ] です。

 多果の発現率が非常に高いシラカシでは、これら2つのタイプの派生型も含めた様々な形態のドングリ
(*)が比較的容易に見つかりますが、1つだけ滅多にお目にかかれないものがあります。それが、私が独自に命名したType-15の多果ドングリです。
* 雑記015に、3果のドングリの主な形態の一覧表があります。


 Type-15の多果ドングリとは、図8-452-1のAのタイプの中で、1つの殻斗の元になる器官に咲いた3つの雌花の内、2つの雌花が退化消滅し、成長したドングリの殻斗に2本の紐状殻斗としてその痕跡を残したものです。具体的な例を図8-452-2に示しますが、これまでにシラカシとウバメガシ(**)の2種類でしかその存在が確認できておらず、多果の発現率が非常に高いシラカシですら、採集できたのは1個だけという代物です。
** ウバメガシでは、1つの個体から一度に30個以上のType-15のドングリを採集したことがあります。詳細は、雑記371を参照願います。


 そんなわけで、Type-15のドングリについては、あれば “ めっけもん ” という感じでいつも探索していますが、それでも樹種を問わず多果が発現しやすい個体については、樹上や樹下に結実したドングリの形態をできる限り入念に観察するようにしてきました。

 それが功を奏したのか、先日高塚公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で久しぶりにType-15の殻斗を採集することができました(図8-452-3参照)。しかも、今回は最も多果が結実しにくい樹種の1つであるコナラから見つかったのです☆
 因みにこの個体では、一度も多果の発現を確認したことはありませんでしたが、季節外れに開花している様子をこれまで幾度か目にしてきたので、一応要チェックの個体としてマークしてきました。やはりコナラの場合は、こういう特殊な個体でしか多果の存在が確認できないことを、今回あらためておもい知らされました。

 ところでこの日は、この1粒だけでも大収穫でしたが、実はこれだけではありませんでした。高塚公園での探索を終えてから、近隣の緑地を隈なく廻り、最後に西神中央公園 [所在地 : 兵庫県神戸市 ] を探索していたら、ほぼ隔年に多果を大量に発現するシラカシから、Type-15の殻斗(図8-452-4参照)が見つかったのです。長い間ドングリをやってますが、1日に2度もこんな幸運にめぐり会えることって、なかなかないんですよね〜

 これにて今年の遠方での探索は終了ですが、最後に極上の二品を入手できて本当に嬉しい限りです。来年もまた充実したドングリ生活が送れることを心から願っています。