雑記445. 2021.11. 3
“ これは果軸であるが、枝でもある その2 ”
 季節外れに開花するドングリの樹で、最もよく目にするのはコナラです。開花の形態は個体によって差がありますが、他の樹種で季節外れに開花したものも加味すると、花軸というものがどのようにして形成されてきたのか、そのおよその過程が推測できると私は考えています(*)
* セクション30を参照願います。
 さて、季節外れに開花するコナラの中でも、葉や冬芽のある枝に直接結実する(**)のは少しばかりレアなケースです。これまでに、高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の個体で通常の4月に開花したものが結実した事例と、服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] の個体で通常の4月の花期の後、1ヶ月程経ってから出現した新枝に開花したものが結実した事例を目撃したことがありますが、今回高塚公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] であらたにもう一つの事例が見つかりました(図8-445-1参照)。
** 果軸を介さずに枝に直接咲く花であれば、より多くの個体で目にすることができますが、通常それらが結実することはありません。

 新枝に対して果軸がどのような位置関係にあるかよくご存知の方であれば、ドングリから少し離れたところから撮影したこの図を見ただけで、この個体の特異性に気づかれることでしょう。冒頭の2つの事例では、数年間に亘って同じ個体を観察しても、枝に結実するのは多くても年に数個程度でしたが、この個体はそれらとは比較にならないぐらい多くのドングリが、枝と果軸の区別が定かでない部位に結実していました。

 図8-445-2は、低位置にある枝を採取して近接撮影したものです。殻斗に堅果が残っている2つのドングリは、冬芽や普通葉がある枝に直接結実しています。また、図8-445-3のように、位置的に果軸と考えられるものの中には、先端に冬芽があるものが多く見られました。因みに、図8-445-4は、この個体の多くの新枝に立つ果軸の様子を撮影したものですが、このように果軸の先端に冬芽があり、枝と果軸が明確に機能分化していないものが数多く見られました。

 
 コナラ亜属の樹種に関しては、季節外れに開花する個体のバリエーションがおよそ把握できたので、今後はアカガシ亜属
(***)のものを重点的に探索していきたいと考えています
*** セクション22のウラジロガシの項を参照願います。