雑記444. 2021.10.29
“ 奇抜なデザイン ”
 兵庫県伊丹市の摂津伊丹廃寺跡にあるアベマキの中に、コンスタントに多果を結実する個体があります。因みに、私がアベマキで多果の結実を確認したことがあるのは、この個体だけです。

 このアベマキについては、これまでにもHPでしばしば紹介してきましたが、2008年に初めてこの個体で多果ドングリの殻斗を見つけてから昨年までの間に、殻斗だけのものも含めて多果形態のものを10個採集しました
(*)。そして先日、あらたに今年結実したものを1個採集しましたが、それは様々な多果の形態のバリエーションを見慣れた私ですら圧倒されてしまうほどの奇抜な姿形をしていました(図8-444-1参照)。
* セクション3-1-2のアベマキの項を参照願います。

 この多果ドングリは、一つの殻斗が2つの堅果を包含したものです。一方の堅果は、殻斗の内側に残る離層の痕跡から、成熟した後に殻斗から放出されたものと思われます。ただ残念ながら、殻斗が落ちていた辺りを隈なく探してみましたが、この殻斗に包含されていたと思われる堅果を見つけ出すことは出来ませんでした。そしてもう一方の堅果は、この写真ではよく判りませんが、鱗片の隙間から殻斗の内側を覗きこむと、胴回りの直径が10数mmぐらいで成長が止まったまま、殻斗の中で朽ちていました。

 図8-444-2は、このドングリを少しずつ違う角度から撮影したものですが、これらを見る限りシラカシやツクバネガシ等のアカガシ亜属でよく目にする、一方の堅果が不稔の2果の殻斗と同じように見えます。ところが、成熟した堅果が包含されていた殻斗を下向きにして台の上に立ててみると、同じものでも全然印象が違うんです(図8-444-3参照)。

 手で支えなくても、たくさんの硬い鱗片がうまい具合にバランスして、この状態のまま自立しています。アカガシ亜属のドングリにはないこの細長い鱗片が、まるで全身を隈無く覆い尽くす毛のように見えます。私はこれを一目見て、妖怪 『 毛羽毛現 』 を想像してしてしまいました。水木しげるのアニメのファンだからかもしれませんが、私以外にもこれをご覧になって同じように感じる方がいらっしゃるのではないでしょうか...??それにしても、ドングリが創出したとは思えない、なんとも奇抜なデザインですよね〜♪

 天候不順のせいか、今年はドングリの実りがあまり良くない個体が多いです。そんな中、どんぐり美術館
(**)のコレクションに相応しい作品がゲットできて、本当に嬉しい限りです☆
** セクション18を参照願います。