雑記437. 2021. 9.14
“ スダジイなのにチクチクしてま〜す♪ ”
 同じ種類のドングリでも形態は様々です。とりわけ、コナラ属やマテバシイ属のドングリは、堅果と殻斗の両方に多様性がうかがえますが、その他の属種について見ると、堅果はまだしも、殻斗の形態はどれも似たような感じに見えます。これは、シイ属やブナ属、クリ属の殻斗が、成熟するとどれも割裂してしまうからかもしれません。その証拠に、シイ属のドングリが熟して割裂する前の殻斗を見ると、鱗片がつくりだすユニークでバラエティに富んだ模様にビックリさせられます。

 図8-437-1は、成熟する半月ぐらい前のスダジイの殻斗の様子を撮影したものですが、これらはほんの一例に過ぎません。

 
 シイ属のドングリの殻斗の多様性については、今年の2月にセクション2-2 『 殻斗形態の多様性 』 の末尾に番外編として掲載しましたが、その中で私が採集していて最も印象に残っていたドングリが、先日山田池公園 [ 所在地 : 大阪府枚方市 ] を訪れた時にたくさん結実していました(図8-437-2参照)。鱗片の先が鋭く尖って長く伸びており、まるで殻斗の表面から棘が生えているように見えます(
*)
* 国外に分布するシイ属の中には、クリのような棘に覆われたものもあります。

 
 但し、棘のように見えると言っても、この個体の鱗片はクリの殻斗を覆う棘のように分岐はしていません。ですが、同じシイ属でも別の個体を見ると、鱗片が激しく分岐したように見えるものもあるので、クリの棘も鱗片が高度にデフォルメ
(**)されたものであるという解釈ができないわけではありません(図8-437-3参照)。
** 鱗片は分岐しないと考えられていますが、ドングリの樹の葉は構造的に分岐できないわけではありません。それは、シラカシで稀に見る二股に分岐した普通葉を見れば明かです。ドングリが誕生した頃には、現在の葉と同様に分岐した葉が併存していたと考えれば、変形葉(葉の一種)である鱗片が分岐していても何ら不思議ではありません。