雑記430. 2021. 6.23
“ まさかの形勢逆転! ”
今年の4月、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のアベマキで花軸の根元に咲いた小さな雌花序(*)を見つけました(図8-430-1参照)。
* 雑記422を参照願います。
この個体には、他にも同じシチュエーションの雌花序が幾つかありましたが、どれも同じ花軸に咲いた他の雌花序に比べるとやや小さめで、花軸とその腋に立つ葉柄との間に挟まれ、今にも圧し潰されそうな感じでした。案の定、開花からおよそ一月半が経つと、ほとんどの幼果は枯死してしまいました(図8-430-2参照)が、1つだけ奇跡的に同じ果軸にある他の幼果と同じサイズにまで成長したものがありました(図8-430-3参照)。
その後、この生き残りの幼果をトレースしていたら、わずか10日程で様子が一変していました。なんと、その幼果だけが他の2つよりもはるかに大きく成長していたのです(図8-430-4参照)。形態を見る限り、この幼果は2年成のルールを無視して、前年の4月に咲いた雌花のあとを追うように急激に成長していくものと思われます(**)。
** セクション31を参照願います。
実は、この個体も摂津伊丹廃寺跡 [ 所在地 : 兵庫県伊丹市 ] のもの(***)と同様に、開花したその年の内に全体の半数以上の雌花が、その前年に咲いた雌花と歩調を合わせるかのように異常成長する傾向があるのです。私が調査した結果、2年成のルールを無視して異常成長する現象は、京阪神に広く分布するアベマキに少なからず見られますが、その年の春に咲いた花の半数近くがこのように異常成長するのは、今のところこれら2体でしか確認できていません。
*** 雑記354を参照願います。
因みに、この個体で今年の5月中旬に撮影した幼果の写真(図8-430-5参照)と比べてみると、今年の4月に花軸の根元に咲いて異常成長している幼果は、前年の4月に咲いたものとほぼ同じサイズにまで成長していることが判ります。要するに、前年の4月に咲いた雌花と今年の4月に咲いて異常成長しているものとの成長過程におけるタイムラグは、現時点で僅か1ヶ月前後にまで短縮されているということです。
この先、2年成のルールを無視して無事に結実するのか、あるいは摂津伊丹廃寺跡の個体で目撃した幼果と同じように、結実に至らず残念な結果に終わってしまうのか...今年は実りの季節がくるまで、この個体から目が離せなくなりました♪