雑記043. 2011. 5.29
“ 奇妙なコナラのドングリから虫が出てきました ”
 昨年の10月末、兵庫県三田市のはじかみ池公園のコナラの枝に、男性器を彷彿させる異様な物体を発見しました(図8-43-1参照)。
 当初は同園のコナラでしか類似のものを見つけられなかったのですが、師走の到来と共にそれまで葉っぱに隠れていた枝がよく見渡せるようになると、他の場所でも目にするようになりました。尤も、図8-43-1のような芸術作品にはなかなかお目にかかれませんが...。

 この奇妙な物体を解体すると、中から小さな幼虫が出てきたことから、コナラのドングリの殻斗(果軸)に形成された虫瘤であることが判りました(*)。昨年、クヌギの堅果に形成された虫瘤から成虫を羽化させるのに成功したので、引き続きこの虫瘤を創り出した昆虫も調べてみることにしました。

 クヌギの堅果の中に形成された虫瘤の場合、幼虫は硬くて乾燥した虫室内に居住していたので、取り出した虫瘤をプラスチックの密閉容器に入れておくだけで簡単に羽化させることが出来ました。ところが、コナラの殻斗に形成された虫瘤の場合、幼虫は湿った植物組織の中に埋没するように暮らしていたので、前者の様に採取してすぐに乾燥した環境下に放置するとまずいような気がしました。

 そこで、枝から採取してからしばらくの間はできるだけ湿潤な環境
を保ってあげようと考え、枝の切り口から虫瘤の付根部分までを湿らせた脱脂綿で包み込み、防虫ネットを被せたガラス瓶(図8-43-2参照)に入れて、通常枝葉が枯れる12月頃までは1週間に一度たっぷりと注水することにしました。

 採取した虫瘤は4つだけなので、成虫の出現はほとんど期待していなかったのですが、今月の25日に何気なく瓶の中を覗き込んでみると、防虫ネット越しに小さな昆虫がいるのを確認しました。これまで以上に、手間隙をかけた事が功を奏したのかどうか判りませんが、幸運にも3つの虫瘤から成虫を羽化させることに成功しました!!
* 詳細は、セクション9-1を参照願います。

 てっきり、これまでとは違う種類の昆虫が出てくるものだと思っていたのですが、捕獲した昆虫を実体顕微鏡で拡大してみると、予想に反してクヌギの堅果から出てきたタマバチとソックリでした(図8-43-4参照)。同じタマバチでも、昆虫の専門家が見れば、微妙な相違点が判るのかもしれませんが、素人の私には全く区別がつかないぐらい両者は酷似していました。クヌギの堅果に形成された虫瘤から出てきたタマバチに比べると、ややウェストが細くて、ヒップが小さめな感じがするのですが.....これって個体差ですかね??

 タマバチに関する文献を調べてみると、同じ仲間でも年1世代で単性生殖(雌のみ)するもの、年1世代で両性生殖するもの、そして年2世代で単性生殖と両性生殖を交互に行うものが存在し、特に年2世代のものについては、同種のタマバチでもその姿形や生態が全く異なる場合があるそうです。

 虫瘤の形態も奇妙ですが、これを創ったタマバチの生態もそれに負けず劣らず奇妙ですね〜。これを機に、昆虫の生態についても少し勉強してみたいと思います。