雑記429. 2021. 6.15
“ ランダムに咲いています 2 ”
 5月の末に、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のスダジイから雌雄の花がランダムに併存する花軸が見つかりました(*)。シイ属の樹木で、私がこの形態の花軸を目にしたのはこれが初めてでした。

 シイ属やマテバシイ属では、雌花と雄花が併存した花軸が一般的ですが、それらは軸上にランダムに咲いているわけではなく、軸の先端から途中まで雄花が咲き、その下方に雌花(両性花含む)が咲くような構造になっています。
 マテバシイ属では、花軸の先端から全体の1/3〜1/2のところまで雄花が咲いたもの(図8-429-1参照)がほとんどですが、中には軸の根元付近まで雄花によって占有されたものもあります(図8-429-2参照)。因みに、後者の形態はシイ属ではあまり多くは見かけませんが、マテバシイ属ではごく普通に見られます。
* 雑記428を参照願います。

 
 さらにマテバシイ属では、先端から雌雄の花が占有する領域が3つに分かれた花軸や、中程に1つだけ雌雄の異なる花があるもの(図8-429-3、図8-429-4参照)など、シイ属ではあまり見かけたことがない形態でもしばしば目撃してきました。

 そんなわけで、シイ属よりもマテバシイ属の方が雌雄の花がランダムに併存することを示す決定的な花軸
(**)が見つかりやすいだろうと思っていたのですが、予想に反して、これぞと思える花軸にはなかなか出会えませんでした。
** 雑記428の図8-428-5に形態例を示します。


 さて、今年はこれまで探し続けてきたシイ属で意中の花軸が見つかったこともあり、この勢いのままマテバシイ属でも同じ形態のものを見つけてやろうと思い、6月に入ってから相当数のマテバシイを対象に、手当たり次第に花軸をチェックしてまわりました。その結果、幸運にも鶴見緑地 [ 所在地 : 大阪府大阪市 ] のマテバシイで、私が思い描いていたものに出会うことができました(図8-429-5参照)。

 この花軸は、軸の先端から1/2ぐらいまでは雄花が占有していましたが、そこから根元までは雌花と雄花(両性花含む)がランダムに咲いていました。パッと見は雄花でも内側に雌蕊がある両性花ということもあるので、入念に構造をチェックしましたが、雄花と思われる花の内側に雌蕊の存在は認められませんでした。
 今回、コナラ属とシイ属に加えて、マテバシイ属でも雌雄の花がランダムに咲いた花軸が確認できたことで、雌雄の花に共通の基部(雌花で言うところの殻斗の元になる器官)が存在することは、もはや疑いようのない事実であると私は確信しています。