雑記427. 2021. 5.26
“ シイ属のスーパー雌花序、再び! ”
 昨年、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] のツブラジイで、1つの殻斗の元になる器官に4つ以上の雌花が咲いた雌花序を見つけました(*)。シイ属の花(果実)は、一般に3果形態のものまでしか確認されていませんでしたが、ドングリの基本的な構造は属種を問わず同じであるという信念をもって探索を続けてきた結果、遂に他の属種と同様に、4果以上の存在を世に知らしめることができたのです
* 雑記385を参照願います。
 この稀少な雌花序を探し出すのに15年もかかりましたので、今後はそうやすやすとはお目にかかれないだろうと思っていましたが、先日同じ個体に、再び4果以上の雌花序が咲いているのを見つけました。ここでは、1つの殻斗の元になる器官に5つの雌花が咲いた雌花序、即ち5果の雌花序を3つの異なる角度から撮影したものを掲載します(図8-427-1参照)。これ以外にも何個か見つけましたので、それらについては “ 多果ドングリの世界 [ セクション3-1-2] ” にて後日あたらめて紹介します。

 
 国産のシイ属(スダジイ、ツブラジイ)は、1つの殻斗の元になる器官に1つの雌花が咲いた単果の雌花序が基本形ですが、多果を大量に発現する個体も少なからずあります。このツブラジイは、そういう個体の1つであることは言うまでもありませんが、これまで目撃してきたものよりも、この個体では殻斗の元になる器官に咲く花の自由度がはるかに高いように思われます。おそらく、現存するシイ属の樹木の中でも、太古の形質を現代まで多分に伝えてきた稀有な存在と言えるのではないでしょうか。