雑記425. 2021. 5.13
“ 花は咲いていませんが... ”
花期が終わって半月以上が経過したクヌギから、同種のものとは思えない花軸が見つかりました(図8-425-1参照)。場所は西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ]で、以前3つの花を咲かせた花軸を見つけたのと同じ個体(*)からです。
* 雑記343を参照願います。
クヌギの花軸は、長さが数mmからせいぜい10mmに満たないものが一般的ですが、今回見つけた花軸は15mmもありました。この花軸には1つも花が咲いていませんでしたが、軸に残留した苞葉(通常は花の腋に存在する)の数をかぞえてみると、はっきりしたものだけで5つもありました。
因みに、このような形態の花軸をコナラ属の樹木で見かけることは稀ですが、シラカシやアラカシで両性花や多果の花を大量に咲かせる個体や、季節外れに断続的に開花する特殊なコナラでは、それほど珍しいものではありません(図8-425-2、図8-425-3参照)。
私は、コナラ属の花軸は誕生した時から徐々に短くなっていると考えています。そして、その証拠となるデータをセクション30-2にまとめていますが、樹種によっては花軸が縮小化傾向にあることを示すのが大変難しいものもあります。中でも、現存するほぼ100%に近い個体が、10mmに満たない短い花軸しか着けないアベマキやクヌギでは、まず無理だろうと思っていました。
そのような状況下で、2年前に見つけたこの個体だけが、これまでに他の個体の数倍の長さの花軸を幾度も発現してきたのです(図8-425-4参照)。とりわけ、今回見つけた花軸はその長さだけでなく、そこにたくさんの花を咲かせる可能性まで示唆していました。そんなわけで、今後クヌギの花軸が縮小化している具体的な証拠が見つかるとすれば、この個体をおいて他にないだろうと、私は密かに期待しているのです。