雑記422. 2021. 4.26
“ 花軸の根元に咲いた雌花 ”
 コナラ属の雌花は、通常花軸の先端から全体の2/3ぐらいのところに咲きますが、稀に花軸の根元に咲くこともあります(図8-422-1参照)。このような雌花は、比較的花軸が長い樹種の特定の個体(特にシラカシとアラカシ)に集中して見られますが、それらが成熟した姿を目にすることはほとんどありません(*)
* 春から秋にかけて断続的に開花する特殊なコナラで目撃したことがあります。詳細は、セクション21の13項を参照願います。

 これまでは比較的長い花軸をもつ樹種を中心に、花軸の根元に咲いた雌花を探索してきましたが、先日西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] で、アベマキの短い花軸の根元に咲いているのを見つけました。このアベマキについては、以前にもこのHPで紹介したことがありますが、毎年3つの雌花を咲かせる花軸(図8-422-2参照)が数多く見られる、同種の中ではちょっと異色の個体です(**)
** 詳細は、雑記209を参照願います。

 目が届く範囲の新枝を全てチェックしたところ、根元に雌花が咲いた花軸は全部で6本ありました。それらの内、異なる2本の花軸を撮影したのが、図8-422-3と図8-422-4です。

 
 他の雌花に比べて花軸の根元にある雌花序は若干小さく見えますが、殻斗の元になる器官が小さいだけで、花柱のサイズを見る限り、雌花そのものは同じサイズであることが判ります。アベマキでは滅多に見られない珍しい事象なので、引き続きこの雌花の動向を注視していきたいと思います。
 余談になりますが、今年の1月に極微な果軸に結実したアラカシのドングリ(***)を目撃してから、一見すると花軸の根元に咲いているように見えるこれらの雌花は、もしかするとその花軸が出現した葉腋に立つ別の極微な花軸に咲いているのかもしれません。通常、花軸は葉腋に1本しか立ちませんが、この場合は2本が並立していると解釈するのです。
 おそらく、根元に立つ雌花序(もしくは幼果)と枝の切断面を観察して、両者の維管束がどのように接続されているかを調べれば、この部分の構造が明らかになると思いますので、後日類似のサンプルを見つけた時にチェックしてみます。
*** 雑記421を参照願います。

(追記)
 花軸の根元に立っていると思われる雌花序が、花軸や新枝とどのように繋がっているのか調べるために、この部分の切断面を観察してみました。ところが、新枝や花軸が出現して間もないせいか、新枝を貫通する維管束と雌花序や花軸との接続状態が不鮮明で、これを見ただけでは花軸の根元に立っているのか、あるいは極端に短い別の花軸に立っているのか判別することはできませんでした。

 一方、外観からより簡単に雌花序の状態を判別できるアラカシをあらたに見つけました。この個体は、ほとんどの花軸の根元に雌花序が立っており、これまで目撃してきたものと違って、雌花序と花軸や新枝との接続状態が目視で簡単に判別できる特徴を有していました(図8-422-5参照)。図の上段は、極端に短い花軸の根元に立つ雌花序、そして下段は普通葉が脱落した落痕の腋に立つ雌花序です。これらの写真から、着目していた雌花序が花軸の根元に立っていることが明らかになりました。