雑記421. 2021. 1. 8
“ これが最終形態? ”
 図8-421-1はアラカシのドングリが結実した様子を撮影したものです。一見するとごく普通のアラカシですが、ドングリの結実している部分に着目すると、少しばかりレアな形態であることに気づきました。

 それは、果軸が極端に短いということです(図8-421-2参照)。この個体では、果軸の長さが1mmもないものが大半を占めているので、まるでドングリが枝に直接結実しているかのように見えるのです。

 
 因みに、典型的なアラカシの果軸を図8-421-3に示します。同じアカガシ亜属の樹種でも、アラカシの果軸は比較的短いものが多く、10mm前後が一般的です。ただ、図8-421-2のように果軸の存在が確認できないぐらい短いものには、あまりお目にかかれないでしょう。

** 雑記253を参照願います。

 この個体にも、僅かながら図8-421-2に比べてやや長めの果軸もありましたが、それでも2mm弱しかありませんでした(図8-421-4参照)。この図の下段の写真は、その果軸とその腋に立つ葉をいっしょに枝から採取したものです。長くてもこの程度ですから、この個体の平均的な果軸がいかに短いかお判りいただけるでしょう。

 
 私は雑記412
(*)の中で、太古から現在に至るまでの間に、コナラ属の果軸が短くなってきていることを指摘しましたが、もしかするとこの先さらに時間が経てば、属種を問わず全ての果軸は図8-421-2のような形態か、あるいは季節外れに開花するコナラ(**)でしばしば目にするような、果軸を介さずに枝に結実するような形態(図8-421-5参照)へと変化していくのかもしれません。
* ドングリの形態が多果から単果に変化しているという事実を基に、ブナ科の果実はその発生時から徐々に少産化の傾向にあると推測し、それを果軸について実証した結果をまとめています。
** セクション22の4項を参照願います。