雑記417. 2020.12. 1
“ 呼び名に相応しいドングリ ”
アカガシは、別名オオガシとも呼ばれています。この名称は、他のカシの仲間に比べて葉が大きいことに由来します。ドングリについてもその呼び名に違わず、国産のカシの仲間では比較的大きなものを結実しますが、個体によって大小の格差が激しく、平均すると他のカシに比べてそれほど大きなわけではありません。
京阪神ではアラカシやシラカシならどこにでもありますが、同じカシ類でもアカガシは少数派です。神社や植物園、大規模な緑地や公園には、数体ぐらい植栽されていることもありますが、それ以外の平地でアカガシを目にすることはほとんどありません(*)。
* 自宅のある兵庫県三田市では、近所の山(羽束山、大船山等)に行けば、たくさんのアカガシが見られます。
私がよく訪れる西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にもアカガシが植栽されています。同園は、敷地面積がおよそ16haもある広大な公園で、様々なドングリの樹がたくさん植栽されていますが、他の場所と同様にアカガシは1体だけです。ただ、ここの個体はアカガシの中でもわりと大きなドングリを結実します。昨年は数個ぐらいしか結実しませんでしたが、先日見たら樹下に数10個ものドングリが落ちていました(図8-417-1参照)。
この個体に結実するドングリは、胴回りがやや太めのがっしりしたタイプと、細長いタイプに二分されます。とりわけ、前者はオオガシという名に相応しいなかなか立派なドングリです。今回、これらの中にひときわ大きなドングリがありました(図8-417-2、図8-417-3参照)。花柱の数をかぞえてみると7本もあったので、たぶんこのドングリの元になった雌花の子房は、7枚の心皮で構成されていたのでしょう(図8-417-4参照)。
コナラ属の雌花の子房は、通常2〜5枚の心皮で構成されています。この範囲内であれば、ドングリのサイズに顕著な差異は認められませんが、6枚以上になるとその枚数に応じて急激にサイズが大きくなります。
以前、心皮と子室の関係を調べたところ、2〜5枚の心皮で構成された子房は、胴回りの切断面が円形状の子房を2〜5等分した子室の中に、それぞれ1〜2個の胚珠を包含します。ところが、6枚以上になると、胚珠の大きさは変わらないので、円形状の子房を6等分した子室の中に全ての胚珠を包含することができなくなります。そのため、円形状の子房は楕円形状へと拡張して、その中に子室をランダムに配置するようになります(**)。
子房が楕円形状に拡張すると、そこに供給される養分のパスは普通のサイズのものに比べて太くなっているので、6枚以上の心皮で構成された子房に由来するドングリは、平均的なサイズのものに比べて極端に大きくなると考えられます。
** 雑記128を参照願います。