雑記411. 2020.11. 2
“ 虫瘤にも負けず ”
 コナラの結実が終盤を迎え、この時期どこに行っても樹下にはたくさんのドングリが落ちています。高塚公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] の湯谷池に面した芝生広場に植栽されたコナラも、既に大半のドングリが熟して地面に落ちていました。また、樹上に残留しているものについても、軽く手で触れただけで殻斗から堅果が外れ落ちてきました。

 この日、それらのコナラの中に、タマバチの仲間が殻斗(果軸を含む)に虫瘤を形成(*)したにも関わらず、運よく結実したドングリを見つけました(図8-411-2参照)。
* セクション9-1-2を参照願います。

 
 このタマバチは、殻斗の付根付近の果軸に虫瘤を形成し、果軸を通して幼果に供給される養分を摂取しながら成長します。そして翌年の春になると、虫瘤の内側から開口して羽化した成虫が出てきます。
 
 産卵されて枯死した幼果よりも果軸の根元側に位置するものは、タマバチの幼虫によって養分の通り道である維管束が遮断されてしまうので、ほとんどの場合は枯死してしまいますが、図8-411-2のドングリは、たぶん維管束が完全に遮断されていなかった(分断されていた)せいで、成長に必要な養分や水分をどうにか確保することができたのでしょう。とってもラッキーなドングリですね☆

 
 そういえば、今年の5月にこの個体を観察していた時、樹上のあちこちで咲いたばかりの雌花にタマバチが産卵していたのを思い出しました。図8-411-3は、その時の様子を撮影したものです。
 このタマバチは、以前に高塚山緑地 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] でコナラの雌花に産卵
(**)していたものと同じ姿形で、その時に見たのと同じ部位に産卵管をたてていました。この個体には、他にも同様の虫瘤が散見されたので、このタマバチが虫瘤を形成したと考えて間違いないでしょう。
** 雑記253を参照願います。

 余談になりますが、当日この芝生広場で少し茶色く変色したオニフスベ [ 学名 : Calvatia nipponica ] を見つけました(図8-411-4参照)。オニフスベはキノコの仲間で、大きなものはビーチボールぐらいのサイズになります。これは真上から見た直径が20cm弱の小ぶりなものでしたが、側面にいい感じの小さな穴が開いていました。まるで、キノコが口を開けて今にも語りかけてきそうな、なんとも言えないキュートな形をしていると思いませんか?

 撮影の際に、大きさの比較対象としてコナラのドングリを載せてみたところ、キュートさがさらに増してしまいました(図8-411-5参照)☆☆ しばらくの間、ドングリ探索はそっちのけで、触ったりつついたりしながら、このキュートな物体との触れ合いを満喫しました♪このまま家に連れて帰りたくなりましたが、ドングリと違ってキノコはその形態を長く保持することができませんので、残念ながら諦めざるをえませんでした。