雑記410. 2020.10.28
“ 病からの生還 ”
 今年の7月、西神中央公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] に植栽されたシラカシで、どこから見ても病んだようにしか見えない幼果が、樹上に散見されました(図8-410-1参照)。

 これらの幼果は、全体が桃色の細かい毛のようなもので覆われていました。また、これらが着果した新枝の冬芽は全て開いており、こちらも病んで朽ち果てたように見えました(図8-410-3参照)。たぶん、実際には病んでいないのかもしれませんが、外観からは生気が全く感じられず、その時点ではこの先成長することはなく、すぐに枯死して落果するだろうと思われました。

 
 実際、これらの幼果の中で極端に外観が酷いもの(図8-410-4参照)については、徐々に落果していきました。ところが、同園を訪れるたびにこれらの様子を見ていたら、脱落していく幼果の中で、病に屈せず成長し続けるものがあることに気づきました。図8-410-4の赤色の矢印で示した幼果もその一つです。

 この幼果は、比較的症状は軽度だったのかもしれませんが、9月以降は順調に成長し続け、普通のドングリに比べるとやや貧相な姿であることは否めませんが、10月末には立派に成熟しました(図8-410-5参照)。

 この幼果以外にも、同様に見栄えは悪いのですが、樹上のあちこちで病から生還したドングリ達の勇姿が確認できました(図8-410-6参照)。

 これらのドングリの堅果(殻斗の一部含む)に見られる汚れは、ハンカチで擦るとわりと簡単に取り除くことができました(図8-410-7参照)。この汚れは殻斗の内側にも付着していたことから、殻斗の一部が変質して堅果の表面に付着したのかもしれません。ただ、なぜこのような現象が発生するのか、その理由については全く判りません。

 今回紹介した堅果に付着した汚れのようなものは、シラカシやそれ以外のアカガシ亜属(ツクバネガシ、アラカシ等)の樹種でもこれまで度々目撃してきましたが、小さな幼果の段階から成熟するまでの様子をトレースしたのは今回が初めてだったので、敢てここに掲載しました。どなたかこの汚れの原因についてご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご教授願います。