雑記406. 2020.10.10
“ 季節外れのコナラの花が結実! ”
コナラの中には、4月に開花してから5〜12月頃にかけて断続的に開花を繰り返す個体があります(*)。因みに、コナラにおけるこの開花現象は取り立てて珍しいものではなく、これまでにも随所にある雑木林や公園でしばしば目にしてきました。
* セクション22の4項を参照願います。
春に一度だけ開花する普通のコナラでは、新枝の先の方に立つ短い花軸に、それぞれ1〜3個程度(図8-406-1参照)の雌花を咲かせます。ところが、季節外れに開花する個体は、春が来て最初の開花で普通の個体よりもはるかに長い花軸に、多いものは10個以上の雌花を咲かせます。さらに、それらの中でも特異な個体では、花軸だけでなく新枝そのものにもたくさんの雌花を咲かせます(図8-406-2参照)。
そして、それ以降に繰り返される断続的な開花は、最初の開花の時よりもたくさんの雌花を咲かせるたくさんの長い花軸(図8-406-3参照)が枝先に出現します。
ここ数年、服部緑地 [ 所在地 : 大阪府豊中市 ] にある季節外れに開花する個体で、開花から結実に至るまでの様子をトレースしてきた結果、春に最初に開花(以下文中で第1花期と称する)してから、一ヶ月程度遅れて開花(以下、文中で第2花期と称する)したものの中にも、第1花期のものとほぼ同時期に毎年僅かながら結実することが明らかになりました。
現時点で、第2花期の5月下旬頃までに咲いた雌花が結実するのは確認できています(図8-406-5、図8-406-6参照)が、6月以降に咲いたものについては未だ確認できていません。
5月中に開花したものは、4月に開花した花粉で活性なものが辛うじて残留していて、それによって受粉しているのかもしれません(**)。だとすれば、6月以降に開花したものでも活性な花粉さえあれば、結実する可能性があるのかもしれません。
** この個体では、第2花期の前半は雌花しか開花せず、雄花が咲き始めるのはだいたい8月頃です。
念のため、第2花期に咲いた雌花が結実した堅果を解体したところ、第1花期のものと同様に問題なく種子を形成していました(図8-406-7参照)。この図を見ると、第1花期と第2花期の堅果のサイズが大きく異なりますが、季節外れに開花する個体では花軸にある殻斗の元になる器官のサイズに大きなバラツキがあるので、開花してから結実するまでの期間の差がサイズに影響しているかどうかは定かではありません。
季節外れと言ってもたかだか一ヶ月遅れの開花ですが、コナラでは結実することがこれで明らかになりました。