雑記400. 2020. 9.20
“ ウツボカズラのような果軸 ”
 ドングリの花は、花軸にある殻斗の元になる器官に咲きます。でも、殻斗の元になる器官から出現するのは花だけではありません。稀に、そこから花軸が出現することもあるのです(*)

 殻斗の元になる器官から花軸だけが出現すると、殻斗の元になる器官は苞の集合体(殻斗ではありません)へと変化します。但し、果軸が成長するにつれてそれらは全て剥落してしまうので、枝に着いた普通の果軸と全く区別がつかなくなります。一方、花軸といっしょに雌花が出現すると、雌花を包含するために形成された殻斗が果軸もいっしょに包含するので、最終的に一つの殻斗が堅果と果軸の両方を包含したドングリが誕生します
(**)
  * セクション26の4項を参照願います。
** 雑記351を参照願います。

 図8-400-1は、殻斗の元になる器官に3つの雌花と2つの花軸が出現したシラカシの幼果(多果形態)です。このように、雌花といっしょに出現した花軸は、小さな堅果に隠れて見えないぐらい、短くて細長いものがほとんどです。中には、果軸の先端に小さな不稔の殻斗が形成されることもありますが、私はこれまで成長しても先端にある小殻斗だけが堅果の隙間から露出したものしか目にしたことがありませんでした(図8-400-2参照)。

 ところが、先月末に蒲池公園 [ 所在地 : 兵庫県神戸市 ] にある大量に多果を発現するシラカシで、堅果と堅果の間から大きな果軸が長く突出した幼果(多果形態)を見つけたのです(図8-400-3参照)。長い果軸を両方から堅果で挟み込んだその姿は、ハエの顔(果軸が口吻です)のように見えますが、果軸そのものは食虫植物の 『ウツボカズラ』 を彷彿させるとても立派なものでした。

 図8-400-4は、図8-400-3の半月後に撮影したものです。図8-400-2の幼果とほぼ同時期に撮影したものですが、これをご覧になればこの果軸が際立って大きいことがお判りいただけるでしょう。但し、こういう特異な形態の多果が結実することは滅多にありません。この多果も、これを撮影した一週間後には落果してしまいました。