雑記040. 2010.11.26
“ ドングリの種類の数だけ存在するの? ”
 ウバメガシのドングリの変形要因について調査する過程で、3つの堅果の中から虫瘤が現れました(図8-40-1参照)。一見、クヌギやアラカシの堅果で見たものと同じ様に見えますが、3つとも1つの堅果に虫室が2個しか入っていないことや、虫室同士が互いに癒着しておらず、完全に分離した状態で存在する点が前者と異なります(*)
  * クヌギとアラカシの堅果内部にある虫瘤については、各々セクション9-1、9-3を参照願います。

 クヌギの堅果の内部にある虫室と形状が良く似ているので、恐らく、クヌギに寄生するタマバチがウバメガシに虫瘤を形成したのだろう.....とは思ったものの、やはり微妙な虫瘤の形態の違いが気になったので、虫室を切断して、内部の幼虫を確認してみることにしました。

 今回、虫瘤のディティールを観察するに当たって、先日購入したばかりのUSBデジタル顕微鏡
(**) [ 図8-40-2参照 ] を使用しました。USBのポートに接続するだけで、パソコンがあればどこでも見れる、持ち運び可能なハンディタイプの顕微鏡(本体重量:38g)です。公称倍率は、光学5倍〜最大150倍までの可変、200万画素の高画質仕様で、価格は12,000円です。

 実際に使って性能を確認したところ、少しでも凹凸のある構造物になると、倍率は30〜40倍程度が限界のようですが、撮影した写真の画質は良好ですし、何よりもこれだけの性能で10000万円程度の低価格であれば、文句は言えないでしょう。
 これまで、ドングリの観察に使用してきた実体顕微鏡は、接眼レンズの倍率が固定なので、検体の全体像を拡大撮影することが出来ませんでしたが、このデジタル顕微鏡を使うことでそれが可能になります。
** この商品を薦めてくれたのは、勤務先で私が率いる開発チームに所属する、精鋭メンバーのOさんです。この場をかりて、あらためて御礼申し上げます。

 ということで、購入したばかりのデジタル顕微鏡を使って、早速切断した虫室の中を覗いてみました。切断面から見える幼虫は、アラカシのものと同じ乳白色で半透明でしたが、虫室から幼虫を取り出してその全体像を見た瞬間、私はビックリしてしまいました。なんとこの幼虫は、クヌギやアラカシのものとは全く形が違っていたのです。
 やや小さめの頭部と大きく膨らんだ胴体、それに体節の辺りが顕著に隆起しており、まるでタツノオトシゴを想起させるような何とも不思議な形でした(図8-40-3参照)。

 幼虫の形態差だけで判断するのは早計かもしれませんが、もしかすると、ドングリの種類毎に寄生するタマバチの種類が異なるのかもしれません。そうなると、今後は調査対象をドングリの種類別に拡張する必要がありそうです。
 現在、今月初旬に採集したアラカシの変形ドングリの虫瘤について、羽化までの経過を調査する計画を立てていますが、可能であればウバメガシの虫瘤についても、併行して進めていきたいと思います。
 私同様、本件に興味をお持ちの方は、成虫の出現報告を鶴首してお待ち下さい。